頭脳バトルとガールズモード

kodamatsukimi2009-01-14



・もうすぐ2009年も1/24が終わってしまおうとする今日この頃ですが
 皆様におかれましては新年をいかがお過ごしでございましょうか。
 景気、良くなると良いなあと思ってわたくしごときにできる事はひとつ、
 ゲームを遊んだり本を読んだりでございます。ごろごろ。仕事も一応しますけども。


・さて今回は前回、2008年を振り返えるにあたって
 珍しくネットでいろいろ調べ物をしていた際、
 このゲームがすごい、と皆さま評価されているのに
 書いているひとは全然ご存じない、というのを慌てて遊んでみたの回でございます。
 反省した。
 これほどの傑作にまったく気付かないまま1年過ごしてしまったとは抜けている。


・というわけで以下2作。
 『国取り頭脳バトル 信長の野望』と『わがままファッションガールズモード』。
 発売されたのは2008年ですが、遊んだのは2009年なので
 このサイトを書いているひと的には2009年のベストゲーム。
 4%も終わっていないのに早くも既に決定した次第。
 と書いてしまうくらいにどちらも良いゲームでございます。


『国取り頭脳バトル 信長の野望

 公式サイト http://www.gamecity.ne.jp/ds/kunitori/ ASIN:B0017LYY1W
 攻略wiki  http://www8.atwiki.jp/kokutounobuyabo/

・DSでコーエーが『信長の野望』。さらに「頭脳バトル」。
 いかにもなタイトル、全く興味が持てない名前が付いているのですが
 中身は素晴らしい。
 欠点はタッチペンの反応が悪いのとその名前だけ、
 と言いきれるくらい良くできている。
 『ファミコンウォーズ』シリーズに並ぶ戦争シミュレーションゲームの傑作です。
 コーエーなのに。
 本当にテクモとくっつこうがどうでも良いとか前回書いてすみませんでした。
 テクモは『ソロモンの鍵』の権利さえ放棄してくれればどうでも良いですが。  


・中身は「信長の野望」の名前が示すように、戦国時代を舞台にしたSLG
 PCでの『信長』シリーズと違ってDS向けにいろいろ簡素化された設計。
 ステージクリア型、別な言い方ではキャンペーンモードが基本で
 1ゲーム一勝負が早ければ10分、
 じっくり腰を据えても30分くらいで気軽に遊べる仕様です。
 チュートリアルとしての一人用モードも充分分量あるし
 もちろんWi-Fiでの対人対戦可能。
 操作は、自分のターンがまわってきたら、部隊を表す駒をタッチペンで指し
 そのターンでどこへ移動するか指示するだけ。
 情報もDSの狭い画面ながら見やすいし
 簡単操作で奥深い。無駄なく良くできているゲームです。



・さて、戦争シミュレーションゲームとは
 『大戦略』をひたすら複雑にしたものと
 将棋をテレビゲーム機で遊ぶもの。この2つが両極なのですが
 その中間を採ったのが『ファミコンウォーズ』シリーズです。

・将棋と違って部隊が負けても対戦相手に駒として取られない。
 占領している程度に応じた収入で、味方部隊を強化できる。
 という仕組みで戦争をゲームルール上に表現している『大戦略』を
 戦場を狭くし、部隊種類を減らして単純化することで
 一戦ごと掛かる時間が減らして遊びやすくしたもの。
 それが『ファミコンウォーズ』。
 ゲームとして遊ぶと一番楽しく遊べる規模はどれくらいなのかの調整。
 その落とし所の程度が見事。
 『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』の感想 http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050424

・対してこの、ええ、なんと略したら良いか困りますがこの「頭脳バトル」は
 1対1で勝負する将棋ではなく
 複数人が同時に遊ぶボードゲーム調で
 戦争ゲームルールを整えたものと言えます。

・1対1ではなく、4人程度で遊ぶように作られた戦争SLG
 その特徴は、ここを占領されたら負け、という
 「本拠地」「本陣」「大本営」のようなものがないこと。
 将棋で言うと、自分の王将を取られても、誰かの王将駒を取ってあれば負けではない。



・タイトルに「国取り」とついていますが、これまでの『信長』のような
 武将に指示して内政してお米を売って兵士を集めて鍛えて侵攻だ、
 という国取りSLGではありません。
 前ステージで稼いだ資金や増やした戦力や取った国データを
 持ち越すことはできません。

・ステージごとに、決められたコスト内で武将を4〜6人程度選んで軍団を編成する。
 有名武将は高コストで戦力も大きい。無名武将は低コストで戦力が小さい。
 兵種は3種類。騎馬、足軽、鉄砲隊。それぞれの武将ごとに固定です。
 戦場では、兵種に関わらず1ターン1マスずつ武将を進軍。
 何部隊でも同じマスに止まれます。
 敵所有マスを占拠すると石高増加して収入上昇。
 収入は6ターン毎に消費して部隊の最大兵士数を増やしたりできます。
 そして敵部隊と同じマスに移動すると戦闘です。


・戦闘は主に戦力、つまり部隊の持つ彼我の兵士数と兵種で自動的に決まります。
 3兵種の3すくみがはっきりでる形式です。
 足軽は騎馬にまったくダメージを与えられない。鉄砲は騎馬に対して無敵です。
 戦力差がどれだけあろうと一方的。
 しかし、2兵種以上が同じマスにいる場合、この有利差は緩和されます。
 騎馬でも鉄砲隊に少しはダメージを与えられるようになる。
 苦手兵種部隊に攻撃されると何もできないので、常に敵部隊の次行動先読みが必須。
 弱点を補う2部隊で組んだり、常に2択3択の手段を用意しておかなければ勝てない。

・もうひとつ特徴として
 攻撃側、つまり敵がいるマスに移動してきた側が大きく有利です。
 攻撃は攻撃側の先制で行われ、攻撃時の攻撃回数は相手の部隊数だけ行われます。
 つまり複数武将で大軍団を作り城を守っていても
 1部隊の攻撃で全部隊が攻撃されるため、大ダメージを受けてしまう。
 攻撃受けて減らされた兵数は、1ターンに1しか回復しない。
 全滅させられて撤退すると3ターンで兵数全快で復帰する。
 徹底時、敵軍に捕まって武将数が減ったりすることはないので
 限られた兵数をどこで使い潰すかが重要です。


・ステージごとの勝利目標は、敵軍の持つ城を全て奪うこと。
 自分の持っている城マスを全て的に奪われると負け。
 先に書いたように、大名武将だろうとも敵に捕まったりはしないので
 いくらでも全滅してかまいません。
 そのかわり常に最低ひとつは城マスを持っていなければならない。

・兵力の集中運用が兵法の基本と、全軍一丸一直線に敵城に向かい
 圧倒的戦力差ではないか、と落城させて喜んでいる間に
 敵部隊が空白地帯や空城になっている自軍の城をどんどん奪っていきます。
 本拠地とか本陣とか本営とかはないのです。
 敵の城を全て落とすまで勝ちではない。最初敵が持っていた城だけでなく
 その城を落としている間に取られた自分の城も奪い返すまで勝ちではない。


・ここがこのゲームの特徴です。
 『大戦略』でも『ファミコンウォーズ』でも『信長』でも将棋でも
 目標は敵戦力の中核たる本体を叩くことが勝利で
 他はすべてそのための手段である、というゲーム。
 しかしこのゲームは違う。

・要は、局地的でも大局的でも全ての戦いに勝てば良いのは同じです。
 しかし、そうできなかった場合、混戦膠着状態になったとき
 最初から示されている規定ターンが来た時に
 敵城を、マスをどれだけ取れているかで勝負が決まる。

・『いたスト』や『カルドセプト』のようなボードゲームと同じです。
 何が起こっても逆転できない圧倒的な差をつけられれば良し。
 そうできないとき。両者の実力が拮抗している時、
 わずかな差が徐々に決定的差に広がっていく総合力を問う代わりに
 相応の時間がかり、しかも容易に逆転が可能ではない
 将棋や『ファミコンウォーズ』と違って、
 あらかじめ決められたある目標点において
 どちらが有利に立っているかだけで、勝敗をつける戦争SLGなのです。
 そこが違う。良い悪いではなく違いです。


・このゲームのマップは複数勢力が同一マップ上で戦う前提でありながら
 マス数にして『ファミコンウォーズ』ほども、広いわけではない。狭い。
 しかし、攻め取らなければならない点と、守り抜かなければならない点は
 ひとつではなく複数あり
 そして部隊数はステージ開始前の編成だけで決まり、生産はできない。

・目標の敵城ひとつを抜くだけなら簡単です。
 けれど、限られた部隊数で全ての自城を守りつつ
 同時に全ての敵城を落とすことは絶対出来ない。
 なぜなら
 敵部隊は捕えられないのだから、こちらが増えないだけでなく
 向こうも減らないのだ。
 領地がいくら減っても最大部隊数にしか関係ないから
 敵戦力は増えないだけで減るわけではないのだ。
 敵の城をいくら取っても、勝利しない限り戦力差は大きくつかないのである。



・どの城を敵に奪わせて、その間の時間と部隊の余裕を使ってどの城を落とすか。
 その結果の積み重ねが最終的に敵を上回っていれば勝ち。
 いつどこを捨て、いつどこを取り、どうして勝ちを拾うかの計画に沿って
 大戦略を用いて戦わないと勝てないというゲーム。

・部隊ごとの戦闘は単純に決まる。兵種の相性差と戦力差。
 部隊編成と運用で全てが決まる。ただ部隊をいつどこに動かすかだけ。
 ただ、どの駒をどのマスにいつ動かすかだけのゲームですが
 それだけなのに、とても奥深く面白い。


・戦後獲得した武将で自由に自軍編成。Wi-Fiでとっても疲れる対人対戦。
 短時間で圧倒的に負ける。最後のぎりぎりで狙い通り逆転の勝ちを拾う。
 文句なく素晴らしい。良くできている。
 よくぞここまで戦争ゲームをテレビゲームとして最適化したものだ。
 間違いなく歴史的傑作です。


『わがままファッション ガールズモード

 公式サイト http://www.nintendo.co.jp/ds/azlj/ ASIN:B001F7BOXY
 情報wiki  http://wikiwiki.jp/girlsmode/


・こちらも上に同じく、みためいかにも
 今流行りのDSでゲームに詳しくないひと相手にひと商売というようなそれですが
 しかし中身は、やはりまともにできている。
 ゲームは本当にどこで面白いか判断したら良いのかわかりません。


・従来のゲームで説明すると、お店経営SLGです。
 品物仕入れてお客様の不満を解消しながらコンビニとかを経営するようなあれ。
 選手の起用を判断しながらお客を集めてサッカークラブチームを運営するあれ。

・このゲームも、展示会でいろいろ仕入れてお店に並べ
 お客様の要望を聞きながら自分のお店を経営していくゲーム。
 ではあるのですが
 決定的に違うのは、仕入れる品物には、値段以外の能力値がないところです。
 値段も実のところさほど重要ではない。
 ファッションアイテムの価値は見た目のみ。
 どういうデザインか。どういうかたちかどういういろか。それだけでしかない。
 その、扱うモノが外見見た目だけにしか価値がないところが
 本作が経営SLGではなく、ファッションを楽しむ「だけ」のゲーム、
 という例のないものに
 そして「それだけ」なのに、面白いものにしているところなのです。


・基本は、お店を訪れたお客様の要望に合わせ
 自店の在庫からアイテムを選ぶだけ。
 繰り返しいいますが、それだけです。
 しかしそれが面白い。
 なぜなら、ゲーム機中身の計算機がどう処理しているかは知りませんが
 選んだ服をお客様が試着してみて
 似合っているかどうか、という
 誰もが納得する得点では争えないところでゲームをする、
 つまり同じルールの下で競争、勝負をするのが、このゲームの全てだから。
 計算機がどう計算しようと、自分が似合っていると思えばそれが勝ちなのです。

・ただ単純にコンピュータの判定で
 選んだその選択が正しかったかを確かめるだけのゲームならそこまでですが
 Wi-Fiコネクションで、自分の選んだアイテムの組み合わせを展示して
 売上という形で、その支持程度を確認できる。
 http://www.nintendo.co.jp/ds/azlj/wi-fi/index.html
 ここが素晴らしい。
 単純です。とても凄く単純なゲームです。
 内部の数値処理は尋常でなく簡単だと思われます。
 しかし、自分の選んだ服や靴や帽子の組み合わせが売れると、うれしい。
 それだけのゲームなのに驚くほど面白い。



・ゲームを有利に進めるために有効に働く数値の効率を優先するゲームではない。
 レースゲームの自車にエンブレムペイントを施すように
 『アイドルマスター』でアイドルを着飾らせるためリアルマネーをはたくように
 単に自己を満足させるための、見た目だけのために、手間暇をかける「ゲーム」。
 これぞファッションを題材とする流儀である。形式である。様式である。
 それもまたゲームになり得るのだ。
 これもまたゲームなのだ。面白いのだ。


・ファッションを題材にしたゲームというと
 『おしゃれ 魔女ラブ&ベリー』(http://osharemajo.com/cs/ds/index.html)がありましたが
 題材は同じでも、ゲームとしての面白さのものが違います。
 これだけ単純な仕組みに、これだけの面白さを作り出せるものとは思わなかった。
 ゲームとはこういう面白味というのもあるのだなと
 ありきたりの仕組みだけではっきりと気づかせてくれるゲーム。
 やられた。負けた。凄いゲームです。