『ランスVI -ゼス崩壊-』


・前々回で『戦国ランス』に大変感心致しましたので
 続けてその前作に当るところのを買ってまいりました。
 今度はRPG。今度もPC18禁。今回はその感想です。


・PC18禁は、つまりそちら向け、最近は男性のみでなく女性向けもあるようですが
 要は、異性と仲良くなる過程SLGAVGとかばかりであります。
 外からはそう見えます。

・ゆえに、そういう種類のゲームばかりでているので
 それが家庭用ゲーム機に薄めたり部分さいたりして出ても
 割とそれなりどころか充分一等の出来である、というようである、ようで立派です。
 というより、コナミ等大企業でなければ生きていけないよという方々にすれば
 そういう特定消費者向けの狭い商売は、もうする気にならない、
 ということなのでもありましょう。カプコン規模なら違うけれども。
 そもそも立派とかいう時点、中小日陰者にろくなのはないという前提である。


・そんな中、そういうのに興味なくとも、ゲームとして楽しめるものがあったとして
 今度果たして、それをゲーム全体の中で見ればどの程度のものなのか、
 というとまあ、それぞれによりけりなのでしょうけれども
 今回の『ランス6』は、『戦国ランス』よりは前のものということで劣りますが
 やはり家庭用機のそれらと比べて、充分一等の出来である、であります。
 最近遊んだRPGで比較すると、『世界樹の迷宮』『九龍妖魔学園紀』あたり。
 同じPCRPGでもファルコムの『英雄伝説6 空の軌跡』より上の出来。くらい。

・ちなみに同じ伝で『戦国ランス』を言うと、比べる対象が思いつきませんが
 遊んだことのある限りでは過去最高でありましょう。
 もっとも比べる対象がない方に比重があるのかもしれないけれども。





・さてお題の『ランス6』、どんな感じのつくりであるかというと
 至極まっとう普通のRPGです。PC18禁だからとの逃げはなし。
 フィールドを旅する型でなく、事件ごとにダンジョンをクリアしていく型で
 戦って経験積んでレベル上げて仲間が増えてアイテム装備してボス敵倒して
 ステージクリア、積み重ねてお話大団円のエンディング。
 とても普通。奇をてらわず良く出来ております。ウェルメイド。


・特徴あげますと、各キャラクターごと戦闘に参加できる回数が決めれられています。
 この回数はダンジョン潜ったら、拠点の街へ戻ることでしか回復しない。
 またこの数値を成長させる機会はとても少ない。
 よって、使えるやつをボス敵に向け温存しつつ、二線級で行けるところまで行く、
 という形で、戦線における戦力の振り分けがひとつ、
 ダンジョン攻略の鍵となっております。

・各キャラクター性能差がはっきりあり
 才能限界、つまりキャラクターごとのレベルキャップですが
 使えない連中の多くはまた、これも低めでありましてどうしようもない。
 それでも1軍を奥まで運ぶためだけに
 そしてお話の展開上いてもらわなければならない。

・もちろんこれは、戦闘では使えない奴でも使わなければならないようにすることで
 登場人物の「キャラを立たせる」効果も狙ったものでありましょう。
 SRPGとかと同じ。違うのは、育てなければいけないわけではないところで
 上手く割り振れれば使わなくともなんとかなるわけ。工夫次第。
 使いようによっては使えるのでなく
 使えないけれどいる、キャラクターがいるところは
 RPGらしいのであるのかもしれません。上手いしかけであります。


・レベルは、現代的というべきか、どこから現代「的」になったのか忘れましたが
 さくさく上がり、また戦闘不能だろうが何人で戦おうが同値得られて
 2軍を育てる労力などはない。戦力育成でつまる、ということはまずありません。
 装備関係も簡素化されて、武器などほとんど意味がない。
 さりとてお金の使い道が他にあるわけでもなかったりする
 買えるのは安全と平和な生活くらい。それがこういう世界の掟なんである。

・よって戦力向上は、ひとつにレベルアップのみ。
 先に進むほど稼げ、レベル1つ上がると能力が極端に上がる方式のバランス調整ゆえ
 オートマッピングが残す記録のためだけに
 ダンジョンの隅々まで1マス残らず歩き潰さねばクリアした気分にならぬ、
 などとはせずに
 一軍メンバーが入口近くで戦いまくってレベル上げ
 一気にクリアして次に進んだ方が効率良い形式。であるのでございます。

・しかし大概のひとは、いつでも確認できるダンジョン踏破率を
 少なくとも達成ご褒美アイテム貰える95%以上へとせずには
 いられないでありましょう。効率に優先するもの。それが自意識。それがRPG。 




・もうひとつ特徴は、イベント進行が街でのコマンド、
 お店で買い物とかセーブとか戦力確認とかに並んで、明示されるところ。
 このアイテムをあそこへ持ってけとかのお使いイベントではなく
 ダンジョン何階のボス敵を倒して街へ戻るとイベント進行とかでもなく
 メインルート進行に対してのいわゆるサブクエストが
 各キャラクターイベントと同列に並んで表示される点。
 なるひど『戦国ランス』もこの形式でしたが
 RPGでもこれはありだな、なるほど、と思った次第であります。



RPGにおけるこの種、イベント進行の表現はどんな感じだったか。

・そもそもイベントとは何ぞや、というと
 アクションやSTGにおけるステージ間デモの発展したものでございます。
 舞台があって登場人物がいてお話があって、そういう設定があって
 後はご自由にご想像ください、ではなく
 もうひとつそのとっかかりとなる、絵やナレーション、人物会話やト書きなど。

・ダンジョンのボス敵倒して街に戻ると、はこの方式そのままです。
 お使いから帰って戻ると故郷の街が滅びていた、パターンは
 ボス敵を倒す、などの達成条件を細かく様々に用意して
 戦って敵倒す以外にもいろいろと、お話の展開に幅を持たせる様式であり。

・これが意識的なのがAVG。フラグです。
 この条件をこの状況で満たすことで話が展開する、という機構を
 筋書きの中に組み込ませて読み解くことをゲームとして遊ぶもの。
 より無理なく自然に一体となっているほど良いようではありますが
 見せ方によってはそうでなかったりもする。操作して操れる立場を
 いつのどこにそのように置くかが大きな仕掛けになったりする。

RPGだと、これは簡素になっております。
 なぜか、というとやはり表現様式、
 見せ方の違いや見せたいものの違いにあるのでしょう。
 RPGAVGと違うのは、達成条件を読み解き、条件達成してその成果を確認する、
 ということよりもSLGと同じく、条件を達成する過程の試行錯誤を楽しむことが
 ゲームの主体となるところであるから、ともまた言えます。


・お話の中で、事件を解決する。そういう筋書きがあって、それをゲームにするとき
 それをどのような形で操作して解けるように表現するか。
 特定の敵を倒す。ある人物に話しかける。
 決められたゴール地点にたどり着く。指定の場所にたどり着いた証を持って帰る。
 問題は、決められた行動、想定された答えでなければ無駄に終わること。
 操作できるのだから自由になる。しかし正解以外は間違いである。
 何でもできる。しかし言われたとおりにしなければ何も展開しない。

・敵を倒せば良い。誰よりも早くたどり着けば良い。
 そういう条件を明示できない展開を見せたいときはどうすれば良いのか。
 それが自然に無理なく上手く運ばなかったものが、記憶に残るゲーム。
 そういうところがコンピューターが管理するRPGという種のある限界でもある。



・最近遊んで記憶に残っているRPGの中で
 『世界樹』や『九龍』や『ランス6』より上のゲームは
 『FF12』と『ペルソナ3』であります。
 RPGが、SLGでなくRPGとしてあることに意味を持たせる面白さを発揮するには
 条件達成手段をより自然に表現すること、つまりAVGのようにすること、に尽きる。
 戦力育成、戦略展開、戦術遂行ゲームならSLGの方が合っているのだから。
 そのためにはつまり、その舞台背景、登場人物背景、設定それらが作る、
 役割を演じる世界が、筋書きを当然に導いているべきものでなければならない。
 そのために、『ペルソナ3』や『FF12』はそれぞれの手段で
 それを他に圧倒して表現している。
 そこがRPGとして明らかに優れている、かどうかはともかく
 他より面白いと思うところなのです。 


・『ワンダと巨像』は、巨像を倒すアクションゲームである。
 倒す方法は舞台となる敵形状と戦場地形が教えてくれる。
 どうみてもそれで完結していて
 ボス敵のところまでたどり着くための道中は無駄であります。

STGやアクションがボス敵百連発構成だったら面白いか、としてみると
 やはりそれだけだと飽きる。
 せっかくいろいろ操作できるのだから様々な条件下でこの制動を試したくある。

RPGではどうか。ボス敵だけ倒せば良くて、雑魚戦闘がない。
 これは違って、雑魚戦闘はしなければならないことではなく
 条件達成のためにある過程の楽しみである。SLGの育成と試行。
 そうではなく、イベント進行条件をボス敵倒す以外に、どのように配置するか、で
 ボス敵倒すだけがイベント達成条件だったらどうか。
 倒すための伝説の武器もお姫様の愛も不要だったらどうだろうか。

・それを表現するために、ボス戦闘と雑魚戦闘のための舞台以外の舞台設定、
 SLGにはいらない、役割を演じて遊ぶための世界がRPGには必要で
 それを表現する手間を割かなければ、RPGにはならない。のであるのである。


・『ランス6』は、恐らくもちろんRPGにしようとしたのでなく
 作ったらばRPGになったのであり『戦国ランス』はSLGにしたのである。

・シリーズ全ての主人公は、成長しないランスというキャラクターである。
 そして『6』と付くくらいだから過去の積み上げがあり
 舞台設定、人物設定が既にあって、その上に同じ主人公を表現するならば
 筋書きは一通り、街は拠点の一箇所で、後は攻略するダンジョンがあるだけでも
 自然多数の展開が生まれる。
 その取捨選択を読み解かせるのでなく
 当然消化するものとして消えない選択肢として明示し
 展開の過程を操作する自由を持たせる形のRPGになるのは実に自然なのだ。

・筋書きを一通りにせずに、国取りSLGという形式にした『戦国ランス』は
 登場人物の大方が今までと違うことで、同じ表現様式でもSLGになっている。

・イベント表現様式。SLGRPGの共通共用化。
 ありそうで他にない表現であると思います。




・ゲームにイベントは必要か、というと必要ではないけれど
 目前の敵を倒すことにも意味や意義があるほうが多層に楽しめるものだ。
 それが発展して、それを読みすすめていくことが目的になり
 ゲームという仕組みがが手段になっても、それで面白ければ良いのである。

・その極端間にあってSLGRPGかのジャンル分類なんてことはどうでも良くて
 要は遊んでいる間、面白いかどうかであり
 それは結局、出来の良し悪しと対象への興味が決定するものであるけれども
 遊び終えて他と比較して納得してみる過程もまた
 ゲームではなくそれを手段にした遊びだけれど
 それもまたテレビゲームではないがゲームでもある。つまりそれも面白い。
 分類してみて、ゲームでなくしてみてゲームを見るのも面白いのです。


・『戦国ランス』は、SLGとして素晴らしく良く出来ています。
 『ランス6』も、PC18禁という、競争相手があまりいなさそうな所のものとは思えぬ
 真っ当なもの。もっとも、家庭用ゲーム機で健全な競争が行われているという前提が
 果たしてあったかしら、については問いません。
 
・このひと月。実に楽しまさせていただきました。
 遊んでいたのはどちらもお子様に見せられないブツではありますが
 けれどしかし、ゲームは面白ければ、PC18禁だろうが何でも良いのである。
 改めてそう感じる次第。
 けれど他の表現媒体でそうであるように
 18禁であることは、もちろん必要ではないはずなのだけれども。