洋風3Dアクションゲーム『God of War』

kodamatsukimi2005-11-23



・今回は「Extendead」(http://gameplay.jp/~ext/index.html)で絶賛されていた『God of War』。
 紹介 5月16日http://gameplay.jp/~ext/diary/200505.html#16
 感想 8月2,3日http://gameplay.jp/~ext/diary/200508.html#02


 公式サイト(音注意)http://www.capcom.co.jp/gow/
 Hotwiredレビュー  http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20050407206.html
 PlayStation mk2   http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_05/act/gow.html


ソニーコンピュータエンタテイメントアメリカ製作。日本版はカプコン
 なぜに。
 同じくSCEヨーロッパ製作の『The Getaway Black Monday』も
 セガが日本版を出しているし
 昨今の世情に配慮してハードメーカーは18歳以上推奨のゲームなど出せないからなのか、
 単に売上の問題か。手間か。めんどうだからか。

アメリカ製作18歳以上推奨であるだけに血の雨が降る傾向、
 画面は大概、夕日でなくて真っ赤に染まっておりますが
 お話しがからっとしている、湿っぽくなく良い意味でB級ハリウッドアクション大作風味、
 アメリカンギリシャ神話。むしろ笑える内容で
 ナレーションの選定を見るにカプコンローカライズ
 そのあたり実にわかっていて良い仕事でございます。


・とにかく、とても良く出来たゲームです。
 ロードは先読みでほとんどなく、グラフィックはきれい。
 アクションは多彩で、かつシンプル軽快操作性良く。
 謎解きも程よく悩ませて、手掛かりは親切に提示されており理不尽に難しくない。
 適度の長さ一周7時間程度。マップ構成も良く練られていて厭きさせない。
 トラップに掛かり穴に落下してやり直し、という場合も復活ポイントが実に親切。
 戦闘難易度調整も良く、イージーは誰でもクリア可能、ベリーハードでは手に汗握る熱い展開。
 これといった欠点がない。
 素晴らしく良く出来ている。


・なのに何かものたりない。
 エンディングをみて、映画のようなメイキング集を見て、チャレンジモードを片付けて
 思わずそのまま2周目を始めてしまうものたりなさ。
 イージーでクリアし、次はベリーハードでと2周しました。

・ああものたりない。
 遊んでいるときは確かに面白いのに。


・そのようなゲームです。

 しかし本音を言うと、最後までプレイしたところで微妙に物足りない感じを受けたのも事実。
 ただこの感情は、例えば『PoP』を遊んで大喜びした数年後に『PoP2』を遊んでみたが
 なんか想像してたよりつまんなかった、みたいなもののような気がする。
 要するに過剰に期待しすぎた、というやつだ。
 最近の例だと、個人的に『ソウルキャリバーII』がそうだったな……
 悪いゲームではないんだが、
 1作目はこれでもかこれでもかとばかりに面白い要素が詰め込まれたゲームだったのに、
 2作目は妙にこじんまりとまとまった感じを受けたのだ。
 
 だが別に『GoW』がダメってわけではないし、
 名作かと問われれば名作だと答えるのも間違いない(これは『PoP2』『キャリバーII』の両方にも言えるが)。
                      「Extendead」'05年8月2日より

 同感です。

・確かに良く出来ている。
 1週目を始めたときは間違いなく傑作、今年のベスト1はこれに決まりだと確信する出来。
 しかし今、これを書いていながら思うのは、なぜこんなにものたりないのか、
 また何度でも遊びたいと思うのに、なぜ手放しで褒める気になれないのか、
 ということ。
 とても不思議。とても違和感があります。




・理由として思いつくのは、
 どこかで見たような要素ばかりで新しさがないから。
 そして「洋ゲー」であるからによる違和感。


・『God of War』は3Dアクションゲーム。
 間違いなく『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の影響を色濃く受けています。
 キャラクターや背景を『ゼルダ』のものに変えたならば『God of War』はどのように映るか。
 何も違いを感じません。

・ダンジョンの仕掛け、ボス戦闘の駆引き、3Dアクションゲームとしての基本骨格部分は
 まるで同じ。
 その他の要素も目新しくなく見たことのあるものばかり。
 『ゼルダ』に『NINJA GAIDEN』の戦闘を足して
 カメラ目線を上から覗くように、『ICO』のように固定して。
 ついでに『シェンムー』のQTEを自然に格好良く。
 最期のやつは何か違う気もいたしますが。


・昨年、『プリンス・オブ・ペルシャ 〜時間の砂〜』について書きました。
 『プリンス・オブ・ペルシャ 〜時間の砂〜』http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040904
 その後、「洋ゲー」は遊びましたか、
 というと実はあまり遊んでいなかったりする。
 XBOXは大分埃を被っているし、いろいろ買ってはいるものの
 『バーンアウト3』くらいしかまともに遊んだといえないでございます。
 XBOX360は既にあちらで発売されてしまいましたがどうしたものか。

・他の「洋ゲー」と比べてどうなのか、とは何もいえません。
 けれど『God of War』は昔の「洋ゲー」とは違う、とは思いました。
 親切丁寧。自分の失敗以外でストレスの溜まる所が無い。
 その見た目を除いて「洋ゲー」であるといえる所は有りません。
 これは『時間の砂』も同じ。
 日本のメーカー、カプコンコナミセガなどが海外向けに作ったと言われて違和感ない。



・もうひとつ挙げるとすると、ボス戦闘が少ないこと。
 「ボス百連発は男のロマン」と豪語するトレジャーあたりに慣れた向きとしては
 難易度ベリーハードでも工夫のし甲斐が少ない、
 敵に距離を取って行動を読み遠巻きに削るパターンの繰返し、
 アクションゲームにとって重要な、自分が上達したという感を受けにくい構成です。


・『時間の砂』もそうでした。共通するのは、ハリウッド映画のようなつくりであること。
 観客の感情盛り上げ曲線が、ゲーム全体で考えられているように見えます。

・ストーリーの流れ、マップ構成、雑魚敵配置、ここでムービー、ボス戦闘。
 全体の時間配分を考えて、最初に見た目引き付ける要素を持って来、
 場面転回してさらに引き付け、飽きさせずに次につなぎ、
 最期の最期にもっとも興奮させて、あるかも知れない次回作引きを感じさせつつ締める。
 だからボス敵が頭と要所と最期にしか出てこない。

・2、3時間でクリアできるならばそれで良いかも知れない。
 けれど1日にクリアするには長過ぎるのに、ゲーム全体をとって構成している。
 実際に遊ぶ場合は途切れ途切れ、何度も何度も同じ場面を繰り返したりするのだから
 そこに齟齬が生まれる。
 盛り上がるはずが、むしろ物足りなく感じてしまう。
 それが従来アクションゲームと比しての違和感ではないか。


・これは「洋ゲー」の特徴であるというのでなく
 たまたま両作がそうであったというだけですが
 2週目以降のおまけ要素がなく、難易度による違いも少なく
 1度目1周目で全ての要素が見れるという構成も
 あるいはそれを裏付けているのかとも思います。


・それに伴いあるのが
 誰でもエンディングが見れて感動し次回作を買ってもらうべくある、親切な構成が
 簡単過ぎる、と感じさせている面。
 簡単ではないです。理不尽ではなくアクションとして良く出来ている、が
 攻略する、何度もクレジットを注ぎコンティニューを繰返して上手くなっていく喜びが薄い。
 あっさりクリア出来てしまう。 

・そこがアクションゲームとして違う。間違っているとは言えないけれど違う。
 今までと違う。
 これは3Dアクションであるがゆえの違いであるのか。

 3つめとして、「ゲーム性の違い」というのもありますね。
 たとえば、剣で敵と斬り合うゲームの場合、3D画面で作るとすれば、
 刀を一振りするだけで周囲の敵を一掃できるといった、豪快なゲームデザインが似合います。
 だけど、ぼくはやはりドット単位で敵の攻撃を見切るような、
 2Dゲームらしい緻密な遊び方に親近感を抱いてしまうんです。
  (『スクリューブレイカー』公式サイト内コラム 杉森建のときどき更新されるれろ
   その2「2Dゲームのおもしろさ」http://www.nintendo.co.jp/n08/v49j/column/index3.htmlより)


・例えば『スト2』『バーチャファイター』の違い、となると必ずしもこの通りではないでしょうが
 一般に「アクション」と言われるジャンルにおいての
 「ドット単位で敵の攻撃を見切るような2Dゲームらしい緻密な遊び方」というゲームはわかるところ。


SFCまでの『マリオ』と『マリオ64』の違い。『時のオカリナ』以降の3Dアクションゲーム。
 そこにある明確な違い、それは、従来の上手くなっていく楽しさを切り捨てるものだったか、
 というと、違います。

・『リンクの冒険』にあって『時のオカリナ』にないのはそれかも知れない。
 けれど、例えば『どろろ』には確かにそれがあります。
 (『どろろhttp://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20041009
  関連;立体チャンバラ大活劇『Kunoichihttp://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050417


・3Dだからではない違いがある。
 従来と違う構成のアクションゲーム。
 個々に区切ってひとつひとつを見れば良く出来ていて面白い。
 けれど全体を、アクションゲームの難易度曲線、徐々に上手くなっていく喜びを味わえる
 「ステージ」構成になっているかといえば違う。
 映画の「場面」構成であるのが『God of War』。




・『God of War』はどのようなゲームなのか。
 良く出来た3Dアクション。
 『ワンダと巨像』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20051106)に有る、
 自分より圧倒的に巨大な敵との戦い、という
 その作品であることの独自要素、「何か新しいことの無い」ゲーム。
 そして旧来アクションゲームとはステージ構成が異なる「映画のような」ゲーム。
 何度も遊ぶゲームでなく、最初の一度に完成度を求めるゲーム。


・「洋ゲー」を遊んでいない私は思います。
 『時間の砂』もそうであったけれど、今の「洋ゲー」は
 良いゲームを集め組み合わせて、より良く洗練させるゲームであるのか、と。

FPSは違うのでしょう。
 そして、そもそも日本にローカライズされるべく選ばれたゲームであること、
 そして、それを2つ3つと遊んだだけで何がわかるわけでもない。
 そもそも「洋ゲー」と分ける意味はどこにある。


・『God of War』は良く出来ています。面白い。
 けれど、確かに面白いのに何かある違和感。
 もう少しあちらのゲームを遊んでみなければなりますまいと
 興味の湧くゲームでありました。