『ローグギャラクシー』は変だ

 公式サイト http://www.level5.co.jp/products/new/roguegalaxy/index.html
 ASIN:B000COFGZI

 PS WORLD 開発者インタビュー http://www.jp.playstation.com/psworld/game/interview/roguegalaxy.html


・ほぼ1年前、2004年11月末発売の『ドラクエ8』開発を担当した、
 レベルファイブhttp://www.level5.co.jp/)によるRPG


・『ドラクエ』前のオリジナル作品『ダーククロニクル』も踏まえたアクションRPG
 一言で言うと3D『聖剣伝説』。
 アクションRPGというほどにアクションは重要でなく
 近距離攻撃、遠距離攻撃、ジャンプ、ガードを使い分ける必要はなくて
 鍛え上げた武器で接近してがりがり削り倒すゲーム。

・大味です。が、アクションは苦手だからRPG
 けれど『テイルズ』シリーズはやはりあの戦闘のボタン連打が良いのだ、
 という嗜好需要に合わせたRPGといえましょう。

・本作ならではの特徴は、『ダーク』シリーズを引き継いでの
 レベルアップだけによらない育成要素。
 いろいろな武器を使い込んで合成する。スキルはアイテムを組み合わせて習得。
 新規アイテムを自ら開発する。やりこみ大作ゲーム。

・30時間ほどかけてクリアしましたが、いろいろ欠点が目に付くゲームです。
 駄作ではない。そこそこ面白い。素直に楽しめるひとも多くいると思います。
 しかし変。どこか外している。
 『ドラクエ』を作った開発会社のもの、と思うとあまりに違和感ある大作RPG



・『ダーククロニクル』(http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft/rpg/dark/)もまた、
 微妙に外したゲームでした。
 こちらもアクションRPG。『ローグギャラクシー』と違い、
 きちんと3Dアクションの文法に乗ったつくりで、腕があればより容易にクリアできます。
 レベルはなく、武器の強化と、イベントアイテムによる体力、防御力強化2つのみ。
 武器をきちんと強化していかなければ敵にダメージが全く与えられない。

・ちまちま雑魚を倒し、武器経験値を稼ぎ、素材アイテムを集めて合成強化。
 ダンジョンは『シレン』のシャッフルダンジョンのようなもので
 短いステージを次々いくつもクリアしていく形。
 これが割りに面倒でなく、さくさく進んで少しずつ確実に強くなっていく感覚と
 単純ながら適度に戦っている感触が楽しめるアクションとあいまって中々楽しい。


・けれどどこか微妙。いうなればそれだけ、のゲームであるのです。
 他にもいろいろやりこみ要素が用意されているのですが、本筋とまったく関係ない。
 バトルステージを使ってゴルフができます。街の池では釣りも出来ます。育てられます。
 だからなんだ。
 ゴルフならば『みんなのゴルフ』を遊びますから。
 なぜRPGで中途半端ないきもの育成ゲームをしなければならんのか。
 まあ、これらは無視しても問題ないのでまだ良いでしょう。

・『クロニクル』を眺めてみると、要は武器を育てるゲームです。
 武器を鍛えるだけのゲーム、ということは鍛えなければクリア出来ないゲーム。
 もちろんそういうゲームであるし、その過程は楽しいのだから良いのですが
 なんとも過程に幅の狭いゲームです。
 成長系統図は枝分かれはするものの一本道。
 せっかくのアクション要素がまるで生かされていない。武器にもいろいろあるのに。

・育てる工程、集める過程はダンジョンで。
 シャッフルダンジョン、見た目はきれい。ですが同じパーツの組み合わせゆえ単調。
 敵の攻撃ワンパターン。
 長く遊ぶゲームなのにこちらの攻撃パターンの少なさに親切に合わせた設計です。
 コンボ数が成長に合わせて増えるので多少変化はあるものの
 腕に任せて進んで行けるのに、敵の攻撃は全て見切ってかわせるのに
 こちらの攻撃ダメージ1。


・それは違うでしょう、といいたくなります。
 武器を鍛えればクリアできますよ。というのはつまり
 経験値稼いでクリア推奨レベルに達していなければクリア出来ませんよと言うに同じ。
 戦略性とか戦術性、考えて工夫してゲームを解く過程がまったくないのです。

・「やりこみ」それすなわち「作業」。
 やりこみ要素、時間をかけて、収集育成していく過程は確かに楽しい。
 しかしそれだけでは、ゲームとして面白くともやがて飽きるのです。

・結局、敵を無視してステージのクリア条件アイテムを隅々までまわって探すゲームになる。
 それはゲームでなく作業。
 成長しなければならないゲーム、お使いをこなさねばいけない作業。
 
・ちなみに成長アイテムもなぜか無駄に広い街中に目立たなく落ちています。変。
 キャラクターもストーリーも微妙に変です。まるで愛着の湧くつくりでない。



・次にレベルファイブは『ドラクエ8』を作ることになります。
 PS2時代に合った見た目きれいな画と広い3Dステージを長いロードを挟まず繋げる技術。
 そこは確かに実力あるメーカー。他の中小ゲームメーカーも是非欲しい技術なのでは。
 ハドソン『天外3』とかアイレムバンピートロット』とかとか。

・『ドラクエ8』はそれはもう、
 標準RPGとして完成した『ドラクエ』システムを新しい技術に載せ変え
 20年近くの経験による熟練のバランス取りを施された作品ですから隙がありません。
 面白い。良い。けれどもうひとつ驚きのないゲームではありました。
 見た目変わっただけ中身そのまま。やはり何年も待たせるのだから
 その高名に相応しい新しい何か、夢見る未来を期待してしまうところではあるのです。




・そして『ローグギャラクシー』。何しろ1年前あの『ドラクエ』をつくったところ。
 新しい何かを期待したいところ。
 しかし結果としては、やはり、技術力はあるのかもしれないが
 わかっていないメーカーであることを再確認させる出来でした。
 そして何より変です。これが受け入れられる層というのが想像つかない。


・敵との戦闘。
 アクションの楽しさとコマンド入力の戦略性。その両立。それが趣旨のようです。
 けれど結果はだから『聖剣伝説』。10年前のゲームと同レベル。

・アクションが『クロニクル』に比べより単純化されて
 敵の攻撃を防げない、かわせないようになっているのは
 複数人バトルで戦略性を打ち出したい、ということなので良いでしょう。 
 しかし、その戦闘パーティメンバーはボスに攻撃されてもガードすらしてくれない無能さ。

・プレイヤー操作キャラクターのみがひたすら攻撃、
 仲間はコマンド入力即時発動のアビリティスキルとアイテム要員。
 積極的に自滅して足を引っ張ってくれるので作戦指示は「何もしない」。
 敵を持ち上げて投げなくて良いです。コンボ攻撃はずれてキャンセルできないから。
 むしろ「たのむから敵の攻撃が届かないところでじっとしていてくれ」が欲しい。
 正義は常にひとり。勇者はいつも孤独なのさ。とかいいたくなります。
 なぜこの仕組みで満足できるのかわかりません。


・例えば『ガントレット』いや『ロードス島戦記』、
 いや『シャイニングフォースネオ』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050410)も
 仲間は無能ではないか、という向きもありますが
 だからあれはオフライン『ディアブロ』『エバークエスト』なのです。
 複数人で遊べば素晴らしく楽しい。
 けれどいろいろ都合あってそうは出来ませんので工夫しましたという仕様。

・その工夫がないのです。
 コマンド入力の戦略だか戦術だかはターン制限がなければ意味がない。
 アクション要素は多人数操作に真っ向対立。
 2つが全く噛み合っていない。
 『聖剣伝説』は当時として、そういうものと割り切って
 『テイルズ』はそれに対し魔法の遠距離型、格闘近距離型の性能振り分けライン戦闘で
 トライエースの『スターオーシャン』『ヴァルキリープロファイル』も
 とそれぞれ工夫している。そこを考えている。

・アクションの楽しさを削り、パーティメンバーを増やしただけ。
 まったく戦略性とかかけらもない。
 それで良いのか、『ドラクエ』で学んだ結果がそれかレベルファイブ


・成長育成収集要素。レベルだけでない様々な育成バリエーション。
 これは多少改善されておりましょう。

・攻撃力はレベルよりも武器性能に多くを寄っていて
 ショップ購入武器も『クロニクル』と違い用意されているので育成しなくとも戦える。
 武器成長重要性もスキル習得に振り分けられて、
 またごく普通の経験値レベルアップもあって、下がっている。
 それだけ解く幅が増えています。
 しっかり育てれば時間をかけただけの強くなる喜びも味わえます。


・しかし、その過程は相変わらず。
 ダンジョンがあって、敵と戦い、アイテムを宝箱から拾い集めて、最期に待つボスを倒す。
 良し出来た。
 そこで終わっている。
 何十時間と、ダンジョンを巡って戦闘を楽しみ、収集育成を楽しめなければならない、
 というのに、その何十時間に変化が全くない。

・強くなって、なったら以前苦戦した容易に敵も倒せるようになった。気持ち良い。
 それは良いです。
 しかしその繰返しだけでは飽きる。
 相も変らぬきれいだが見たことのあるパーツが組み合わさったただ広いだけのダンジョンに
 与える数値だけが上がっているのだと気付いた時。

・何か以前出来なかった新しいことを、出来るようになること、
 あるいはしなければならなくなるようにしなければならない。 
 その当り前のことが出来ない。出来ていない。
 キャラ性能にもスキル使用にも、その意味を持たせているのか本当に使って欲しいのか、
 と、甚だ疑問です。 

・まだ『クロニクル』の武器を育てるだけに集中していれば良かったほうが、良かった。
 成長育成要素の幅を広げるのは良いけれど、それが解き方の幅にまったく結びついていない。
 まったく変だ。


・大作RPGというものを、やりこみRPGというものを、レベルファイブは誤解している。
 『ドラクエ』と『FF』のどこが面白いといえるのか判っているのか疑問に思える。

・例えば遊び方として
 攻撃するのはひとりだけで良い、だから育成するのもひとりだけで良い。
 とするようにできます。
 実際それで殆ど全てクリアできる。欠陥ですが
 つまり『聖剣伝説』という作りなのだな、
 他の豊富に用意された育成要素は飾りなのだな、と思える。
 ところが明らかに製作者はそういうように想定していない。 
 なぜ仲間が戦闘パーティ制限の3人より多くいて
 それらを使い分ける程違いがないのに全員の性能を高めておかなければならないのか。
 そこまで考えていないように見える。

・やりこみというのはより長時間楽しみたいための工夫なのであって
 そうも出来るという幅であること。
 例えば『ディスガイア』。
 いかに少ない手間でもバリエーションに意味を持たせてまとめあげるか。
 そうしなければならないもの、しなくても何も変わらないもの、ではない。 


・本当にレベルファイブはこのゲームを面白いと思っているのだろうか。
 ストーリーや演出や『ダーククロニクル』に輪をかけて奇怪ひとを選ぶデザインは
 好みの問題と、見ないことに出来ますが、それにしても下手だ。変だ。

・根本的には悪くないけれど、大きな欠点なくそこそこ良く出来て面白いけれど
 それ以上ではない。それ以上にいろいろ変。おかしい。間違っているのでなく変。
 この『ローグギャラクシー』が現状最上最高と自信を持てるのならば
 レベルファイブのオリジナル作品には付いていけない。
 向いている方向がまるで他と違う、変なメーカーであります。