『バイオハザード5』

kodamatsukimi2009-05-09


 公式サイト http://www.capcom.co.jp/bio5/ ASIN:B001MJ07MY

・大阪はカプコンの「バイオハザード」シリーズは「サバイバルホラー」だそうである。
 こたびPS3版との同時発売最新作『5』、宣伝文句は「恐怖の原点は、恐怖の頂点へ。」。
 けれどさっぱり怖くないのであった。恐ろしいほど怖くない。なんという恐怖。
 そこは照りつける太陽陰影鮮やかな大草原の大騒動。
 それは独立記念日に攻めてくるアメリカンハリウッドアクションであり
 敵は、なぞのせいめいたいに操られている人間。
 でも問答無用でヘッドショット。すっきりさわやかほがらかゲーム。
 あああまぶしい。

・お話の筋書きも登場人物のつくりも、平野耕太せんせに指摘されるまでもなく
 もはや喜劇的にしか見えませんが
 しかし馬鹿にするわけではなく
 みためはほんとうに映画のよう、無駄に細かくぴかぴかであり
 ゲームとしても、リアルを排したつくりが遊んでいて面白い。


・以前、ゲームは映画かそうでないかでもめていたことがありましたが
 部分を切り出せば映画になり、またゲームとしても遊べるよう作れば
 それは映画でありゲームであり、それ以上であるとも言えましょう。
 質はともかく。

・「バイオハザード」シリーズは、ゲームとして始まって
 『5』で映画のようにへ相当に這い寄った作りとなりましたが
 ゲームとして見るなら、ここ画として相当に追い付き、ではなぜ今ゲームでもあるのか
 不思議な作品。
 それは映画よりゲームのほうが面白いからでありましょうか。




・今回の舞台は闇に包まれた謎の洋館敵組織ではなく、アフリカの大地。とその周辺。
 空は開放的であり、お約束の失われた秘宝伝説的地下遺跡にもぐっても広々で
 とても見晴らしが良い。
 ゲームの中でも外でも無駄にお金がかかっております。すごい。無駄に凄い。

・この景色というのは、暗くて狭くてじめっとしているからこそのホラーである、
 という常識を逆転の発想でさすがカプコンだねですが
 では今回のこわさ担当に選ばれましたは、前作『4』と同じく
 見た目は普通のひとが襲ってくるというところにあります。
 普通のひとなので供給豊かであり、全方位わらわらと生み出てもわりと自然。
 といってもこれゲームなので、襲ってくるすなわち敵と割り切れるのがことわり。
 人質を誤射してもスコアが下がるだけでゴメンナサイがゲームの正義。


・もうひとつみためとして、今回は相棒と2人ひとくみで終始行動。
 昨今の銃を撃つアクションゲーム標準装備の、オンライン乱入協力体制完備。
 気付けば看板奪われていたモンスターを狩るゲームへ、さらにと遅れを取らぬため
 「バイオ」といえども変わらねばならないのよさ、というよりは
 恐怖混沌の巷へ単身突撃の愚かしさにようやく気付くかと今更です。
 なぜ一部の旧式1人用オフラインRPGは、3人とか4人で戦っているのかしら。
 狭い洞窟の『ウィザードリィ』だって6人なのにさ。
 囲んでぼこぼこにするのが正義なのにさ。

・とはいえ前作までの旧態にくらべれば、2人がかりは強力です。
 オフラインだとコンピュータが操作してくれて、それでもクリアはもちろんできますが
 やはり、ゲームであることを知っているふりが許されるひとは、それだけで使えて
 オンライン協力でさくさくテンポ良く進めていくのは実に強い万能感。

・分担してしかけを解こうという2人体制というのは
 アクションアドベンチャーゲームとしても目新しい要素ではないですが
 シリーズの1作として幅を広げる良い特徴付けであると言えましょう。
 複数主人公でひとつのお話を様々な視点から、あるいは時として接点をもちながら、
 というこれまでの手法が悪いわけではないですが
 今回は映画的みせかたにこだわったと言うべきか、単に作業量の問題か。




・「バイオハザード」をそうたらしめているのは、ゲームの方から見ると
 変としか言いようのない戦闘時の操作方法です。
 今回は『4』をほぼ引き継ぎ、基本画面分割なしの2人協力同時操作に対応したもので
 目の前に敵がいて、ナイフを振って半歩射程が届かなかったら、
 ナイフをしまって銃を担いで1歩前進し、
 再びナイフを構えて、斬りつけなければならない仕様。
 蹴りやパンチを出せる間合いにあえて合わせなければ、移動しながら攻撃できません。
 ダッシュしてとび蹴りかますとか銃を乱射しながら突撃とかできない。

・目の前に敵がいるのに即攻撃できない。
 いったん敵に攻撃が届く位置に、つまり敵の攻撃も届きそうな位置に立ち止まって
 どういう攻撃をするかと選択しなければならない。
 他のアクションゲームに慣れているといらつくこと請け合い。
 こんなまだるっこしいことをしていて生き残れるのだから「バイオ」は恐怖です。


・しかしその制限があるからこそ、「バイオハザード」シリーズは
 アクションゲームとして楽しめるのです。
 走りながら撃てない。敵の前で構えてからでないと必ず撃てない。
 例外はなく、そうしなければならないものであるということを受け入れれば
 その枠内でいかに効率良く、敵に弾撃ち斬って蹴って殴って倒すかの
 どれをいつどれだけするか選択し、的確に操作することが楽しい。

・この機械的な操作感は、アクションゲームでありながら
 RPGにおいて「たたかう」「どの敵に」というような選択をしている間も
 敵が移動し攻撃してくるような、つまりリアルタイムストラテジーのような感覚。
 それが特徴。


・主人公は敵より圧倒的に強いのです。遠くから攻撃できる強力な銃器を使いこなせる。
 敵の攻撃が届く前にすべての敵を片づけられるのです。
 つまりガンSTG。近づいてくる前に敵を倒しきれなければ攻撃されるが
 その前に殲滅すれば一方的に無傷で勝てる。

・けれど違うのは、ガンSTGと違って敵は全方位から襲ってくるところ。
 こちらが自由に移動できる代わりに、敵もひとつ決められた移動経路以外も許される。
 上空から眺めると、様々な移動性能と攻撃範囲と威力を持つ敵がわらわらきて
 それを主人公が持てるアイテムを使いどのように上手く処理していくかのごとく。
 
・アクションゲームというのは、操作が許される限界まで上手ければ
 敵がどのように攻撃してきても勝てるように成っていなくてはならない。
 つまり知っていなければ絶対に避けられない攻撃は、なるべく有ってはいけない。
 そしてまた、知っていれば上手い下手関わりなく避けられる攻撃は演出、様式美。
 それは操作の上手い下手を競うものであれば。

・だから「バイオハザード」の、特に『4』からの仕組みは
 独特にアクションゲームとしての楽しさがあるのです。
 先を見越して素早く正確に操作する。
 知っていても遅ければ駄目だし、速くても間違っては充分でない。 


・この仕組みは、ホラーゲームとして怪しい洋館を探索するAVG
 文章選択肢ではなく3Dに奥行きある立体の建物を動き回るお化け屋敷の楽しさを
 表現しようとした際にできたものであります。
 走りながらドア越しに銃を乱射したり
 罠の仕掛けを即座に天井へ張り付けるほど高くジャンプして避けたりを
 わざと出来ないようにしたのではなく
 そういうことをするゲームではなかったからこうなったのであって
 怖がらせるために、動きを堅くしたわけでもない。

・しかしゲームとして遊ぶと、そうなるのです。
 緩慢な動きのゾンビが目の前にいる。にもかかわらず自分の行動がそれ以上に複雑で
 だから逃げられず、怖い。
 『4』以降は視点の変更によって、この「怖さ」が
 逃げられない怖さから、倒しきれなかった己への口惜しさにと少し変わりますが
 しかしこの直観的でない、攻撃の構えをとかなければ相手との距離をとれない操作こそ
 「バイオハザード」です。



・『5』は『4』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20060216)に比べてどうか。
 みためはさらにとっても良くなり、お話もハリウッド映画調にだいぶメリハリ整って
 オンライン協力に合わせたステージ構成もかなり練られていて熱い。
 しかし2人協力用に全編作られているので
 初回はともかく、1人で遊びこむのは難しいのがアクションゲームとして欠点。
 ここは消化不良、次回作要検討ですが
 全体として充分面白いゲームであると言えましょう。

・単に銃を撃つアクションゲームを遊びたいなら他により良いものがある。
 けれど「バイオハザード」は、独特の操作制限を持って成り立っている
 独自独特のアクションゲームであり、その魅力は確かにあります。

・今後どうなるのか。
 『ゼルダ』のように探索ゲームにするのか
 映画のような見映えするアクションゲームとしてより仕立てるのか。
 オンライン協力は今後標準でありましょうから
 その意味で『5』は、『4』を引き継いで
 頂点を狙うべく、新しく原点となるものを確認するに留まる作品です。
 どのように広く深く遊べるゲームにするのかしないのか。
 それが今後の「バイオハザード」に注目するところです。