『罪と罰』

kodamatsukimi2009-11-26


公式サイト http://www.nintendo.co.jp/wii/r2vj/index.html# ASIN:B001HBIPLM

・タイトルナンバーなし。サブタイトル『宇宙(そら)の継承者』。
 同名のN64版は『地球(ほし)の継承者』なのでここで区別付けるわけですが
 正直この名前はどうなんだ。特に「そら」と「ほし」。
 この路線が続くなら次回作は『時空(とき)の継承者』、
 その次は『理(ことわり)の継承者』とかなのかしらとそらおそろしい。

・ついでに書いておくと、いくらSTG=ポエム=定説とはいえ
 『罪と罰』というタイトルも大仰すぎであり、
 といって『GlassSoldier』もやはりどうかと思うので
 もう『SIN AND PUNISHMENT』で良いのでないかではないか。
 もしくは『赤と黒』とか。ロシア文学風。ナラ―。


・それはさて置き、本作は9年前にN64で発売された『罪と罰』の後継作品。
  バーチャルコンソール罪と罰 〜地球の継承者〜http://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_tb/index.html
 N64版『罪罰』は、ひとことで言うとアクションゲーム史に残る傑作である。

・長々言うと
 アクションゲームやSTGというマニアどもが口うるさいジャンルにおいて
 その昔から良い作品を出しているものの、ものによって出来不出来あるのが玉に傷、
 という定評あるトレジャー(http://www.treasure-inc.co.jp/index01.html)と
 品質安定感が比較的抜群の任天堂が組んでの作品であるからし
 これは凄いかもしれないに違いない、という期待がされ発売された作品で
 例えばこれ(http://www.1101.com/nintendo/nin16/)とか読むと洗脳されそうですが
 けれど今からすれば『ワリオワールド』の例からも任天堂あまり関係なく
 しかし出てみた結果は、大変素晴らしいゲームでありました。

・ようするにN64版はとても良いゲーム。迷わずバーチャルコンソールで買って良し。



N64版『罪罰』の面白さを9年後の今説明しますと、同時代性によったものになりますが
 その魅力は、当時として2Dアクションゲームと3Dアクションゲームの切り替えならぬ、
 中間点たるところにあった、と言えます。

・『マリオ』や『ゼルダ』は、N64でそれまでの2Dから3Dへはっきり切り替わりましたが
 このような置き換えが完璧になされる様はまさに任天堂最上級の仕事でありまして
 多くの場合、切り替えの上手く置き代えがたいものばかりです。
 例えば現在で言うところの2Dの弾幕STG。そして3DのFPS
 これらを2Dから3Dへ、3Dから2Dへ、同種でなくとも面白さを保ちつつ、
 同じ操作を楽しむアクションゲームとして置き換えるには、どのようなものが適当か。
 N64版『罪罰』は、2Dから3Dへ切り替えんとする当時にあって
 その中間をたまたまだかどうかはともかく、とても上手く表現した作品です。


・基本は3DSTG。FPSのように地面走り回る系でなく空飛びまわる系。
 けれど『エースコンバット』系とはまた違い、『パンツァードラグーン』のような、
 空中にあらかじめ敷かれた不可視コース上を強制スクロールで流れていく種類のもの。
 ただ操作上は2Dアクションのそれ。
 敵弾は真横や後方から飛んでくることはなく、画面正面から飛んでくる。
 そしてそれをコースの幅内であれば左右上下に動いて避けることができる。
 そして攻撃は基本的に画面奥に向かって行う。

・わかりやすくいうと、アーケードゲームのガンSTGFPSでなくTPSになったもの。
 普通のいわゆるTPSとどこが違うかというと、
 レースゲームのように決められたコースを、強制スクロールで進行するところ。
 FPSやTPSのように足を止めて打ち合うのではなく
 同じ方向へ戦闘機で突き進みながらはたき落とし合う種類の3DSTG。
 FPSのように敵の方向を向く必要がない。2DSTGのように敵弾をみて避けられる。
 それでいて攻撃は画面内の照準へ向かい、画面奥に向かってなされる。


・全くわかりやすくないこういう言葉での説明は遊んでみれば不要。
 それでもなお、とても便利な「なになにのような」という比喩をもちいていうならば
 『アフターバーナー』とか『スペースハリアー』のようなゲーム。
 つまりそういうことなのです。例が古すぎて微妙。『パンドラ』も微妙だ。

・仕様からして対人対戦という種類の遊び方は絶対的にできませんが
 みため狭いところから景色良いところまで高速自在に飛びまわっている感の演出で
 とても気持ち良くなれる1人用銃撃アクションゲーム。
 弾幕STGでもFPSでもなく、『メタルスラッグ』とか『ガンスタ―ヒーローズ』でもなく
 『スペハリ』やR360で一瞬垣間夢見た気がする未来形の絵づくりが特徴です。
 いや『飛びだせ大作戦』もそれほど悪くないゲームだと思いますが。

セガ的なあれは置いて、他にもこういう画面作りであったゲームは
 『ワイルドガンズ』(http://www.ne.jp/asahi/hzk/kommander/rvwguns.html)のように
 2D時代からガンSTG系列の派生としてありました。
 64版『罪罰』は3D表現、奥行きある舞台を見かけだけでなく作れるようになってから
 それを『マリオ』や『ゼルダ』とはまた違う形で利用し
 かつ2Dだ3Dだからと言わせぬアクションゲームとしての上質さを伴っていたところが
 当時面白かった理由です。

・しかしゲームに面白い理由など不要。
 遊んでいて燃える。手に汗握る。苦労して先に進めるようになり、クリアして嬉しい。
 幾度遊んでも尽きることなき面白さ。
 ゲームの楽しさはこれだ。これがゲームの面白さだと言えること。
 それを実現している、64版『罪罰』はそういう素晴らしいゲームです。




・それで今回のWii版『罪罰』。
 ぱっと見不安、触って安心、遊び終えては64版とやや異なる感触だ、という感想。


・比較して変わった所は、まず、空中を自在に飛びまわれるようになったところ。
 ジャンプもあるのですが、方向入力で普通に空中へも移動できる。落下死がない。
 『スぺハリ』と違って空に逃げられなかったN64版では
 強い無敵判定を持つ左右へのローリングが回避の基本。
 加えて地形や敵状況に合わせて、空中への2段ジャンプを駆使して進行するのですが
 本作ではそれこそまさに、画面四隅を
 ローリング代わりに空中から空中でも使えるダッシュでぐるぐるまわっていれば
 たいていなんとかなってしまう。

・それに付する形で、左右移動で場面により
 ある程度3Dフィールド内の位置移動が可能になっている。
 例えば周囲を大回転するボスを、照準で追うのでなく
 右方向に回転していったならば右に移動すれば
 自機の後方にいるカメラも右の方へ追従する、というように。

・これによってステージ構成が多彩になった、
 つまり長所である大胆な画面演出が、さらに派手になった所は大変良い。
 けれども地面から飛び立てない、画面外へと逃れられない故に
 ジャンプも駆使した位置どりも攻略の重要要素であった64版に比べると
 やや単純化、というより避けゲーから照準ゲーへ重点が移った、というつくりの変化。
 『鉄腕アトム アトムハートの秘密』(ASIN:B0000CE7IE)のような、
 ショットならぬダッシュボタン押し疲れゲームであります。


・もうひとつ変更点として、攻撃手段にため攻撃、チャージショットが加わった点。
 打ちっぱなしやソードやカウンターよりは弱いけれども
 ゲーム仕様の必然的に挿入される演出の合間、避けるだけでなくすることがあるのと
 カウンター以外のわかりやすい攻撃手段の差別化、また演出上の強調としても
 『斑鳩』の「力の解放」同様、地味に良い変更点。

・同じく付帯する変化として、照準自動ロックが中途切り替えでなく
 最初からキャラクター選択で選択でき、以降変更できなくなったところ。
 チャージショットもロックタイプに合わせて個性づけされて
 攻略にはそれほど関わらないちょっとした変化として、良い感じです。
 キャラ選択がお話の進行に全く関わらないのは
 「シューティング中心にプレイするかストーリー中心にプレイするかはあなた次第!」
 と64版の箱裏書きに書いてあったゲームにしてはどうかと思いますが
 アクションゲーム、なかでも特にシューティングだったら仕方ないな。 

・他にもWiiだしせっかくだからと2人同時協力モードも付けていますが
 以前書いた通り『虫姫さまふたり』をどれだけのひとがふたりで遊ぶのかというお話。
 ダブルプレイはしても協力プレイはしない。
 『虫姫さま』はひとりこちらもひとり。仕方ないよポエムだからね。


・ゲーム中身てきな部分ではない所の大きな変化が、その分量。
 クリアまでにかかる時間が長くなったところ。
 64版が1周45分くらいであるのに対し、Wii版は2時間半ほどかかる。
 『シルバーガン』のACモードとSSモード以上の差異である。

・アクションゲームとしても、今やこれくらいは当然必要であり
 1周45分で終わってしまうようなものが売り物にならないというのはわかりますですが
 遊ぶ方としては、1時間かけず一気にエンディングまで遊ぶのもまた好きなのである。
 もちろんステージ途中でもセーブしてコンティニュー可能、
 ステージごとにスコアが集計されるなどフォローはされているものの
 1周2時間以上はさすがにつらい。集中力うんぬん以前に物理的にどうか。
 チュートリアルを兼ねたステージゼロは難度イージーだけで良かったのではと思うし
 高速移動中に挟まるボス戦前後の演出で覆いきれない間も居心地よろしくない。



・と、いろいろ変更点にけちをつけてみたりもするわけですが
 Wii版が駄目かというとそうではない。
 N64版のようなゲームではないけれども、『罪と罰』ではある。

・ステージはさらに多様、ボスも高難度では特に工夫し甲斐充分。
 デモシーンの絵作りは、64版はあれで独特の味わいがあったがこれはどうなんだ、
 と初見思いますが、動き出すと違う。高速動き回ってこその絵作りと無理やり理解。
 お話もやはりそれが世界の定説と思わされる超展開の自己陶酔溢れる意味不明な作り。
 あれ褒めてない。


・もとい、難度が低めであるのも良いところ。
 64版はその長さの割に、細かく攻略を要する箇所が続くつくり。
 けれど残機数が初めからとても多く、数の論理で進め
 また上の任天堂すごい記事を裏切らず調整が絶妙で、とにかく良くできておりました。
 対してWii版の仕様は、長いだけにまた難度の表現も違う。
 残機はなく無限コンティニュー可能、途中セーブして中断可能、
 復活ポイントも相当に数多く設定されており
 一部のボス敵攻略の他は、演出に沿って気持ち良く進行できます。
 ひとつのステージも長い分、適度に途中でボス戦が用意され
 そこでのみひっかかりがあり、ひっかかっても直前復活、調子が極力途切れない。 
 これは高難度でも同様で、このあたりの調整はさすが任天堂なのかというところ。

・そして64版より断固優れているところとして
 コンティニュー前にゲームオーバー画面が入るところを是非挙げておきたい。
 このゲームオーバー画面の効果音がまたむかつくように出来ている。
 何が何でももう寝ないとまずくとも「CONTINUE」を押さないわけにはいかない。
 『メタルギアソリッド1』とか『真女神3』のゲームオーバー画面に並ぶ、
 素晴らしく腹立たしいので素晴らしいゲームオーバーと言えましょう。



・演出が強化、それによりステージ長大化ではあるものの
 アクションゲームとしては難しいことはないつくり。
 回避はダッシュでほぼ賄えるため、無駄なく動きまわるというより
 ダメージで減算されるスコア倍率の維持のみが目的であるわかりやすいもの。
 撃ち返し可能区別が付きにくいのが難ながらターゲット表示性能は優秀で
 距離と位置に応じてソードと溜めを使い分けるだけが、なかなかに楽しい。


・当時、64版を面白いと思ったのは
 3DSTGの定型がいまだなかった、
 『エースコンバット』も『スターフォックス』もどちらも2DSTGからする理想と違い、
 また『マリオ64』のような方向も3Dアクションの結論でなく
 『オメガブースト』も『Shinobi』『Kunoichi』ですらないではないか、
 というようなところがあります。

・今思うならば、64版『罪罰』に感じた面白さの一環は、トレジャーという視点から
 『シルバーガン』とも『ガンスタ』とも異なる形を示したことにあるかもしれません。
 2DSTGは、ほぼCAVEやタイトーのひとに代表される弾幕系ばかりの印象下、
 『罪罰』のそれは2Dのそれと違い、そしてFPSやTPSのような狭いジャンルとも異なり
 そして3DSTGの一片として独自に未だある。
 3D2Dどちらもを捉えた、引いては撃ち寄せては斬る遠近兼ね備えたアクションゲームの
 ひとつの定型に、現在から見てある。


・以前、彩京の『ガンスパイク』はSTGかアクションなのかという題がありましたが
 『ガンスタ』はどうか、では『罪罰』はどうか。

Wii版『罪と罰』は、一息に駆け抜ける遊び方が難しいつくりであるのは残念ながら
 64版にみた2Dや3DのSTGFPSといった固定ジャンルに捉われない
 アクションゲームのひとつを思い出させてくれる、
 そしてそれを損なわず今に受け継いだ良い作品であります。