正しいSFまんが「まんがサイエンスⅨ」

kodamatsukimi2004-08-08


 著者;あさりよしとお 
 学習研究社  ノーラコミックスデラックス
 8月3日発売  ¥820  ISBN:4056036136


・小学5年と6年の科学に連載されている科学マンガをまとめたもの。
 ’88年から現在に至るまで連載。
 読者は常に入れ替わっているわけですが、内容は常に新しいもの。
 その時点での最新「科学」をわかりやすく紹介。


・この手の、専門家でない読者を対象にした科学に関するテキスト、
 意外に少ないものです。
 日経サイエンスhttp://www.nikkei-science.com/)は専門的過ぎるし
 ニュートンhttp://www.newtonpress.co.jp/)は値段のわりに内容が薄い。
 新聞のサイエンス欄などが適当。

・本屋のサイエンスの棚に並んでいるのは
 重厚な専門書と疑似科学、いわゆるトンデモ本ばかり。
 門外漢にもわかりやすく、手軽によめて
 もちろん正しい内容の科学の本。
 その一つとして安心して読めるのがこの「まんがサイエンス」。


・小学生向け雑誌の連載作品ながら、常にきちんと取材を行い
 現在の最先端の科学を、まさに小学生にもわかるように
 わかりやすく、それでいて浅くなることなく解説してくれます。
 
・ただ注意したいのは、巻数の初めのほう、
 昔の内容に現在からみれば間違っている点もあります。
 連載開始から十数年。科学は常に進歩し続けているのです。


・この9巻、「からだ 再発見」に収められているのは
 「背をのばす方法」「毒はどうして毒なのか」「脂肪のやくわり」
 「カゼってなに」「デジカメと目はどちらが優秀か」「不老不死」
 などなど。

・身近なところにある科学。
 純粋に楽しめる、そして役にも立ってしまう。
 唯一無二の面白い学習マンガ。それが「まんがサイエンス」なのです。


 
・著者、あさりよしとお浅利義遠)さんは、わりにマニア向けのマンガを書く方。
 代表作は「宇宙家族カールビンソン」。
 他に「ワッハマン」「細腕三畳紀」「るくるく」など。
 
・「カールビンソン」はアメリカのSFホームドラマ「宇宙家族ロビンソン」
 (参考 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0001EQJVE/250-0869723-4561842
 のもじり。
 シュールかつシニカルでサイエンスなフィクションのマニアックホームコメディドラマ。
 作者が好きなように書いている、代表作にふさわしい作品。
 元祖、徳間書店キャプテンコミックス版、講談社アフタヌーンコミックス版の3種があります。

・あさりさんの趣味嗜好はSFよりであることは、どの作品を見ても伺えます。
 SFはサイエンスフィクション。
 科学的な嘘です。

・嘘と間違いは違います。著者がわかっているか、勘違いしているか、知らないか。
 SFは科学的に正しく嘘をつかねばなない。


・SFマンガ、
 裏「まんがサイエンス」ともいうべきSF(サイエンスなフィクション)マンガも
 あさりさんは書いています。

・それが「HAL(はいばああかでみっくらぼ)」。

 1巻 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847033744/qid=1091972230/sr=1-6/ref=sr_1_10_6/250-0869723-4561842
 2巻 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847034252/qid=1091972335/sr=1-71/ref=sr_1_2_71/250-0869723-4561842

 このマンガのコンセプトは「この本には一部真実が含まれています」。
 つまりフィクションです、と断っているわけですが
 一部どころかかなりの部分が真実。

・「ドップラー効果による赤方偏移」や「シュレディンガーの猫」など
 「まんがサイエンス」よりも難解で大人向け。
 シュールでシニカルに科学について解説するサイエンスコメディ。
 原子力に関する日本の「安全神話」として
 東海村のウラン加工施設臨界事故について語られる回などは
 まさにSFのブラックユーモアに満ちた内容。
 
・どの部分が真実で、どの部分が嘘なのかは書かれておらず
 読者の科学的教養が試されてしまいます。
 「まんがサイエンス」を楽しんだサイエンスファンならば必読のSF本。

・純粋に楽しめて、読者の知識まで試されてしまう作品。
 正しい科学まんがと、正しいSFマンガ。
 あさりよしとおこそ、正しいSFマンガ家であるといえるでしょう。



・というわけでこのサイトらしく紋切り型に言い切ってみました。
 
・基本的にあさりさんのマンガはユーモアマンガなのですが
 「なつのロケット」
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4592132793/qid=1091972230/sr=1-3/ref=sr_1_10_3/250-0869723-4561842
 は例外的に真面目な作品。
 ロケットへの熱意が伝わってくるいい作品です。

・それから学研のサイト、学研サイエンスキッズ(http://kids.gakken.co.jp/kagaku/index.html
 の中に、毎日変わるサイエンスクイズがあります。

 まんがサイエンスクイズラリー http://kids.gakken.co.jp/campus/science/

 何気に難しい。小学生はこんなに高度なことをやっているのでしょうか。
 大学生よりも優秀です。


・他のSFマンガとしては、「2001夜物語」の星野之宣さんの諸作品や
 鶴田謙二さんの「 The Spirit of Wonder」などもお勧めです。

・また機会があればそのうちに。