『どろろ』

kodamatsukimi2004-10-09


 セガ PS2 アクションRPG 9月9日発売 \7,140 ASIN:B0002IW760

 公式サイト http://dororo.sega.jp/
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_04/arpg/dororo.html

・今回は前々回でけなすような引用をした『どろろ』。
 売り上げは今週のゲーム雑誌によれば6万本程度。
 少ないです。
 そんなものではない、本当に力の入った作品。
 新しくはありませんが、セガらしい、しっかりとしたアクションゲームの良作です。 


・開発は旧AM1研、セガ・ワウエンターテイメント。
 1研は『バーチャファイター』などの花形AM2研と違い、
 雑多、様々なジャンルのAC用ソフトを手がけた部署。
 代表作は『ダイナマイト刑事』、なぜかザが2度つく『ザ ハウス オブ ザ デッド』、
 などではありますが、むしろ記憶に残らず
 忘れ去られていくACの片隅の筐体の集合こそが、AM1研を体言するものでしょう。

・だからこそ、マニアはワウの作品に期待を抱けず、
 ナムコと共同開発という触れ込みの『ヴァンパイアナイト』と同じような、
 2戦級のイメージを持って見てしまいます。

セガの最近のゲームはどうももうひとつ、とマニア層にはそっぽを向かれています。
 DCの立ち上げ時の広告コピーに「セガってダサいよな」というものがありました。
 セガは変わります、と訴えるもの。
 しかし、セガはDCに破れ、以前「ダサい」ままです。
 けれど、マーク3、メガドラと、そのダサい中にマニアを掴む、
 泥臭い、骨太なゲームを出してきたのがセガ
 ダサいけれども、面白い。

・現在セガは開発タイトルを絞り、1つのソフトに注力して完成度を高めるよう、
 努力しているようです。
 それが良い方に出たのが『どろろ』であり
 「サクラ大戦」のようにやりすぎなほどに力が入った作りは
 新しいセガの可能性を感じさせるもの。
 でも『サクラ大戦5 エピソード0』はやぱりいまいちですが。
 大丈夫かセガ



・『どろろ』の原作は、手塚治虫が'67年、30年近く前に
 「週刊少年サンデー」に連載したマンガ。
 単行本全4巻。今、店頭に並ぶ「手塚治虫マガジン」掲載の最終話にあるように
 未完に終わったマンガです。
 手塚マンガには珍しい時代劇、剣戟アクション。
 とは言え、何百冊ものマンガを書きながら
 現在少年誌で主流のバトルもの、スポーツものを書いていない、
 描けない手塚治虫。すべからくその作品の全ては人間の愛憎を描くヒューマンドラマ。
 『どろろ』も少年誌向けではあるものの泥臭く、やはり人気が出なかったのでしょう。
 現在は妖怪退治ものの名作として知られますが、作品のテーマが未消化であることもあり
 諸手を挙げて褒め称える作品ではありません。


セガは'02年、手塚治虫キャラクターの独占ゲーム化権を取得しました。
 セガニュースリリース http://sega.jp/release/nr020517_2.html
 手塚マンガでゲーム化しておもしろそうなもの、そんなに思いつきません。

・まず『アトム』はいいとして、『ブラックジャック』は『ライフ&デス』だし
 『アドルフに告ぐ』はいろいろヤバイ、
 『ばるぼら』『MW』『奇子』。どれも危険すぎです。
 ほかには『リボンの騎士』か。
 や、これは面白そうですよ。『サクラ大戦』作っていないでこちらを作ってください。
 他には、昔コナミがFCで『火の鳥 鳳凰編』を題材にゲーム化したことがありました。
 アクションゲームの良作でしたが、『火の鳥』とあまり関係ないのが玉に瑕。


・キャラクターゲームは基本的に駄作ぞろい。
 これは9割9分9厘くらいはバンダイの所為かも知れませんが、
 そもそもゲームに合わないものを、とにかくテレビゲームにしてしまおう、
 しなければならない、という所に無理があります。

・また、相乗効果、いわゆるメディアミックスでそのキャラクタービジネスを盛り上げよう、
 というのがテーマですから時間的な制約があります。
 (参考;GAME Watchインタビュー
 メディアミックスとゲーム制作の有効な関係 http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040812/cedec2.htm
 セガの『ASTRO BOY 鉄腕アトムPS2もアニメ終了までに発売したいタイトル。
 できればアトム生誕の2003年中に出したかったはずです。
 時間に追われるがゆえに、中途半端になってしまう危険性を
 キャラクターゲームは持っています。
 (参考;GAME Watch『アトム』レビュー http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040510/atm.htm

・一方で、原作があるからこそゲーム自体の面白さに注力できる、とも言えるでしょう。
 昨年末の『ASTRO BOY 鉄腕アトム アトムハートの秘密]』(GBA)は
 トレジャーアクションと手塚マンガ世界の双方の魅力を持つ、素晴らしいゲームでした。
 (参考;GAME Watchレビュー http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20031218/atom.htm
     んじゃめな本舗 ゲーム放談より
   「あれが、お前のアトムだ。」http://www.jttk.zaq.ne.jp/ndjamena/game/ASTROBOY.htm

・『どろろ』は手塚マンガの中では珍しいゲーム向きの題材であり、
 アニメにも関係なく、マンガ連載は30年前。じっくり時間を掛けられます。
 ただ、いかんせん地味ではありますが。



・ゲーム内容は3Dアクション。
 雑魚戦はさほど脅威ではなく、ボス敵ごとの手に汗にぎる熱い戦いこそが主眼。
 ボスは隙の少ない通常攻撃と、幾種かの威力十分の必殺攻撃を使い分けてきます。
 必殺攻撃には必ず前兆行動、あるいはエフェクトがあり、
 通常攻撃は距離をとって備え、必殺攻撃後の隙を突いて後方に回り込み切り崩すパターン。
 何度もやられてはパターンを刻み、極めれば容易にノーダメージで完勝できる、
 まさにアクションゲーム、過去の数多の名作アクションの王道をいくもの。

・敵には必ず弱点があり、必ず勝てるわけです。
 つまり何度もやられてしまうのは、すべて自分が至らないから。
 難易度は高くなく、ダッシュ、2段ジャンプ、よろめき効果のある連続技をしっかり抑えれば
 問題なくクリアできます。
 とにかく熱い。
 攻撃パターンを読み、相手との距離を見切り、回避パターンを試行錯誤し、
 反撃機会を窺い、あと一撃、この一瞬に賭ける緊張感。

・ボスの魔人は全48体。それぞれに個性的で、容易に倒せるものから
 攻略に悩み続けるものまで様々。
 全てを倒しつくすまで、ゲームは終わりません。


・キャラクターゲームとしてもよくできています。
 原作をベースに再構成。章立てにわけて目的を明確化。
 以前書いた『プリンスオブペルシャ 時間の砂』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040904)は
 ストーリーがあるものの引きが弱く、今どこに向かっているのか、何が目的なのか、
 いまひとつわかりづらい欠点がありました。
 初代『ペルシャ』はとにかく上に上って悪い大臣を倒し姫を助ける、
 というわかりやすい話が、ゲームシステムと合っていたのですが。

・『どろろ』は自分の体を取り戻す、という百鬼丸と、
 それを助け、また独自に動くどろろの二人が物語を引っ張ってくれます。
 ストーリーの引きこそキャラクターゲームの利点。

・今週のファミ通桜井政博さんのコラム「ゲームについて思うこと」でも触れられていましたが
 百鬼丸どろろとも、しっかりと魅力的なキャラクターに演出されています。
 まさにやりすぎなほどに手間をかけてつくられており、
 所詮続編のありえない、一発ものの作品を
 ここまで作り込んで大丈夫なのかと心配になるほど。
 ドラマパートだけでもかなりに見ごたえ。


百鬼丸が魔神を倒し、体の部位を取り戻すたびに能力が強化されていくシステム。
 ストーリー上の固定ボスと、それ以外のボス魔神が配置されていますが
 アクションゲームであるだけに、能力差はできるだけつくりたくないところ、
 しかし、成長の自由度も持たせたい。
 48体もいるだけに、なかなかそのバランスは難しいところです。
 性能の決定的な差が生まれないよう、またランダム入手、
 あるいは隠し扱いの武器である太刀、奥義についても、
 主題であるアクションパートに影響がないよう、快感を感じられるよう、
 苦労している様が窺えます。



・『どろろ』というマイナーなキャラクターゲーム、
 いささか傾きがちなセガブランドのアクションゲーム。
 双方の要素を、セガらしく、
 アクションゲームのスタンダートを外すことなく纏め上げられた作品。

セガはまだ大丈夫。
 売り上げはちょっと不安です。



・プレイ時間は、初回クリアまで12時間ほど。
 慣れれば3時間弱。
 しかし、実際のプレイ時間はその数倍。私の場合はおよそ30時間。
 何度も挑戦し、攻略法を見つけ出す、その時間こそが、このゲームの楽しさです。

・本来攻略情報は必要ないゲームではありますが
 へたれゲーマーにはあるボスのスライス入力がとてもきつい。
 そこで1週間ほど苦労しました。
 どうしてもクリアできない時のみ、ご覧ください。

 2chゲーム攻略板「どろろ」攻略スレまとめページ http://48demons.nobody.jp/