大人の任天堂


・「ピクミン」のメインモードは誰かと競うものではありません。
 ただ、アイテムを集めるのが目的。
 「2」ではストーリー上の制限時間も排除され
 クリアのために、勝つために効率を求める必要もありません。

・では、何のために、何を目的として遊ぶのか。
 何が面白さなのか。


・「ピクミン」の面白さは、うまくアイテムを集めること。
 ピクミンにてきるだけ損害を出さず、時間をかけず、目的を達成すること。
 うまく指揮して、何をどの順番で行うかを考えて、それを実行すること。

・操作することのアクションの楽しさと
 その世界を眺め味わう楽しさと
 世界のルールを理解し攻略して自分の物とする楽しさ。

・どれもがあって、どれもがしっかりできていて、何も考えずに楽しめる。
 それはわかる。
 けれども任天堂のゲームを、すくなくとも私が好んでやらないのはなぜか。
 上質であることはわかるのに、なぜ遊ばないのか。



・「ピクミン」に対する感想として
 ピクミンに思い入れがなければ作業だ、というものがあります。

・思い入れとは、この作られた世界の演出。

 ピクミンをひきつれて歩くことは、とっても楽しいです。
 Cボタンで列をくいっくいっと直して、
 「はいはいこっちですよ〜」と誘導するだけで、どうしてこんなに楽しいのでしょう。
 少し休憩してるとケンカを始めるピクミン
 転ぶピクミンピクミンピクミン…。  
 制限時間内に労働力を配分するパズルゲームの構造と、
 なにか情に訴えかけるけなげなピクミンたち。
 その葛藤の中でゲームをする私。
 のんびりいつまでもピクミンといたいような気がしているのに、
 時間に煽られてピクミンに無理させて(戦わせて、食べられて、おぼれて、爆発させて)
 効率を追求してしまいます。
 誰もが良い親でありたいと願いつつも、
 子どもに「早くしなさい!」と口うるさく言ってしまう感覚?
 子どもがブランコから落ちそうで危険なのに、
 のんびりホームビデオを撮って笑っている、そんな気持ちであります。
 それは愛と言えるのでしょうか? 
 無条件に従ってくれるピクミンには無償の愛か、
 もっと怖い何かを感じたりするのですけれど。
   
 Nintendo iNSIDE 「ピクミン」ユーザーレビュー QUINTY さんのレビュー
   http://www.nintendo-inside.jp/review/view.php?id=10448 より全文引用

 
・その演出にのれるかどうかで、印象は変わってくるでしょう。
 上質でも作業と感じられるから遊ばないのか。
 

 どうしてもステージクリアというものがないと、
 ゲームにならへんからって、
 その「かたち」のほうを、大事にするんですよね、みんな。
 ストーリーはあるんですか?
 ステージはいくつあるんですか?
 アイテムは?
 という文法が、ゲームの中にいっぱいある。けど、
 そういうことじゃなくて、もっと単純なことを
 みんなが繰り返していたら、
 その結果が遊びになっている、というのが、
 ぼくの理想なんです。 
  
 ほぼ日刊イトイ新聞 樹の上の秘密基地「宮本茂×糸井重里 ピクミンをめぐる対談」
     http://www.1101.com/nintendo/pikmin その4宮本茂さんの発言より

任天堂が提供するのは、遊び場。そして遊び道具。

・遊ぶことは面白い。

・では、それはなぜか。なぜゲームで遊んでいて面白くないゲームがあるのか。
 面白くなければ、それは遊びではない。
 そうなるでしょうか。


・ゲームは遊びである。
 ゲーム機は遊び道具である。
 道具には優れたものと駄目なものがある。

・駄目なものは、自分が遊び道具であることを理解していない。
 遊び道具は、遊んでいて楽しく面白くなければ、それは遊ぶ道具ではない。

・いや、それは任天堂の考え方だ。
 ゲームを遊び道具としての用途にのみ貶めてはいけない。
 もっと多くの応用がある。
 作業の繰り返しにも、上達はあり
 作業の中にも、試行による思考はあり
 作業からの開放にこそ、喜びはあり
 それらは否定されるものではない。


・ゲームは無意味なもの。所詮ゲーム。お遊びだ、暇つぶしだ。
 それこそ無意味な問いかけ。暇つぶしでないことなど、ひとにはない。
 遊びを無意味な作業と取るか、
 そこに意味など求めないか。
 それは違う価値観からの見方の相違でしかない。



任天堂の考えるゲームは遊び場と遊び道具。
 確かに大人の作った優れた作品であるけれども
 そこに大人は遊べない。 
 そこに大人は遊ぶことを望まれていない。
 だから大人は見ているしかない。
 それでも自分のなかの子供が遊ぶのを見ているのは楽しい。
 そして遊ぶことそれ自体は誰にとっても楽しい。 


・それが全年齢向けを志向する任天堂の考え作るゲームである。