無限の可能性を持つRPG「ジルオール」

kodamatsukimi2005-02-20


 PS KOEI ’00年12月7日発売 ベスト版¥2,940 ASIN:B00005OUU0
 公式サイト http://www.gamecity.ne.jp/products/products/ee/Rlzill.htm

・今回はこの春にPS2でのリニューアル版発売予定のRPG「ジルオール」です。
 「無限の可能性」とは大きく出ましたが、「可能性」ですから。


・中世ヨーロッパ風、エルフやドワーフが登場する剣と魔法のファンタジーワールド、
 いわゆるソード&ソーサリー、べたな世界観のマイナーなRPGです。
 開発発売はKOEI。
 光栄といえば「信長」「三国志」などのSLGと「無双」シリーズですが
 SLG以外にも以外に良作がたくさんあります。

・例えば「伊忍道」(PC、SFC)。
 天正伊賀の乱で滅ぼされた伊賀忍者の生き残りが
 全国をめぐり仲間を集めて力をつけ、大名をそそのかして織田軍に攻撃させ
 安土城に潜入、魔王信長を討ち果たすRPG。
 和風RPGはなかなかないなかなんとも素敵な設定で
 また、RPGとしてもシンプルながら良いでき。素直にストレス無く楽しめます。

・他には本作同様中世ヨーロッパ風の「ゼルドナーシルト」(ASIN:B000062V6V)。
 必然なく美形の傭兵隊長を主人公として、好みの国を選んで味方し
 その国を世界統一させるのが目的。いかにも悪そうな敵対傭兵隊長
 獅子心王リチャード一世がモデル風の馬鹿王など、素敵キャラクターが大勢。
 戦闘は部下を率いた集団戦闘、シンプルで深みは無いものの
 それなりに楽しめる良作。

・どちらも魅力的な設定で、システムをしっかりと練り込み
 さらに力を入れて作れば素晴らしい作品になるだろう、というもの。
 そしてそれは「ジルオール」においても同様です。


・「ジルオール」のプレイヤーキャラクターは名もない冒険者
 ギルドで仕事を請け、モンスターを倒して成長し、各地を巡って仲間を集め
 ダンジョンに潜り、世界の様々な謎を解く。
 とても普通のRPG。
 違うのは伝説の勇者さま御一行は別にいて、既に彼らが魔王を倒していること。

・その勇者さまは大国の王となり、世界征服に乗り出します。
 また一方で魔族の暗躍、竜王の思惑、精霊の巫女たちの動向であるとかが
 主人公たるプレイヤーキャラクターとは関係ないところで進行。
 ある国では政争に明け暮れたり王女様同士が三角関係でもめていたり
 一方で救世主が世界は破滅へと向かうと教えをたれていたり。

・何もしないでいると、それらのイベントは自動進行し
 いつの間にか終わってしまいます。
 プレイヤーキャラクターが必ずしも物語の主人公ではない。
 プレイヤーがいてもいなくとも何もしなくとも
 それなりに歴史は動いていくのです。


・この辺りアートディンクの「ルナティックドーン」シリーズを思わせます。
 主人公は伝説の勇者ではなく王族の落とし種でもなく、無名の冒険者

・その無名で平凡な人物がプレイヤーの力を借りることで世界の歴史を変えていく、
 すなわちプレイヤーの力が世界を変える、そこがSLGやRPGの楽しさですが
 神にも等しい力を得ても世界を何も変えられないのが「ルナドン」で
 それはひいてはMMORPGにもいえましょう。
 それはそれで「リアル」に現実を「シミュレート」しているともいえます。
 何しろ私たちは伝説の勇者でも、冒険者でもないのですから。
 
・逆に「ドラクエ」は非力の主人公であっても、プレイヤーが何かをしなければ
 何も世界は変わらない、すなわち唯一プレイヤーこそが世界を変えることができる
 伝説の英雄、物語の主人公。いくらオルテガやパパスが主人公より有能でも
 物語に、世界に選ばれない悲劇の英雄は世界を変えられないのです。
 それはすなわち、自分の力で世界が変わるように感じられる、ということ。
 製作者の用意したお話、劇の台本を決められたとおりに演じているのに過ぎません。


・どちらがいいというわけではなく、それがゲームで
 小説を越える万能の自由度
 現実を越える究極のリアリティなど
 成り立ちようがないのですけれども
 「ジルオール」はその両者の中間にある作品、といえます。

・世界の動向に背を向けて自分勝手に生きても良いし
 積極的に勇者を助けたり、あるいは敵対しても良い。
 決められたシナリオを演じてもいいし、何もしなくても許される。 
 どのようにしてもやがて終わりはやってきて、戦いのなかに消えるか
 あるいは歴史に名を残すか、それとも無名のまま次の旅に向かうのか。

・RPGのシナリオにおける自由度。そしてSLGの追い求めるリアリティ。
 「ジルオール」は大きな、無限の可能性を感じさせる作品です。



・ゲームとしては上2作に習ってシンプルな普通のでき。
 戦闘のエフェクトがすべてキャンセルできるのは良い工夫。
 武器防具はどこに行っても同じものしか売っていないので
 洞窟でレアアイテムを入手し、それを使って鍛冶屋で鍛えて
 性能を上げなければなりません。
 伝説級のアイテムは終盤シナリオまで手に入らないしくみ。
 リアルといえばリアル。


・成長システムは独特で、宿しているソウル、
 他のRPGでいえばジョブ、職業に当たるものですが
 レベルアップ時にそのソウルごと、上昇量が決められています。
 すなわち「FF6」の魔石のようなもの。
 普段はどのソウルをつけていても能力は変わりません。

・ソウルごとに覚えられるスキル、すなわちアビリティがあって
 戦闘ごとに得られるスキルポイントで習得可能、
 習得スキルはソウルを付け替えても使用可能。「FF5」です。

・新しいソウル獲得はギルドで請け負う依頼の達成によってもらえるポイントを
 勇敢さ、優しさ、探究心、信仰、野生、冷静さ、などに割り振り
 決められた一定の数値に達した時に得られます。  

・ここがワナで、どれくらいのポイントを割り振ればソウルが得られるのか
 ヒントがほとんどありません。
 ソウルごとにレベルアップ時のパラメータが決まりますから
 効率よく上位ソウルを付け替えないといくらレベルを上げても弱いまま。
 逆に敵と戦わず依頼だけこなして上位ソウルを獲得してから
 一気にレベルを上げたほうが強くなります。
 かといってのんびりソウルポイントを集めているとイベントが進行し
 強くならない内にシナリオが終了してしまう。
 その辺りバランスが良い、とはいえませんけれども面白いシステムではあります。



・イベント進行もフラグがわかりづらく、成長パターンも一筋縄ではいかない。
 荒削りで未完成なゲーム。
 けれどもその世界観はとても魅力。
 改めて作り直せば、すばらしい傑作になるに違いない。
 
セガはシャイニングよりもファンタシーオブアースを作ってくださいよう、
 などというのは大概叶わぬマニアの戯言なのですが
 このたびKOEIさんにおこれましては「ジルオール」の続編、
 いやリメイク作品を出していただけるらしい。

 「ジルオール インフィニット」公式サイト http://www.gamecity.ne.jp/zo/

・感想。何にも変わってない。

・本当に悪い意味でも良い意味でも全く変わっていない。
 絵がきれいになっただけでまったく同じです。
 これは期待できるのかできないのか。

・せめてカルラさんの恥ずかしい格好は変えていただきたかったですよ末弥純さん。
 発売の延期もあって雑誌の取り上げかたもいまいちですが
 一番ページを割いてくれているのが
 「電撃プレイステーションガールズスタイル」というのはどうなんですか。
 それでも2ページですけど。そういう作品だったのですか。


・設定資料集の開発者アンケートに
 「開発終盤で全体の2/3近いエピソードをカットした」と書かれており
 それは製作管理が根本的に問題あるのでは、と思ったりもしますが
 リメイクで完全になればすごい作品になりうる、何しろ無限の可能性ですから。
 けれども発売延期は、やはり今回もしっかり管理できていないということか。

・というわけで期待半分不安半分な「ジルオール インフィニット」。
 このサイトでその後話題がでないようなら
 「ああ、気まずい出来だったのだな」
 とお察しください。


 
 参考;攻略・ファンサイト 
  「ジルオールを極める!」http://www.netlaputa.ne.jp/~oni/kouei/zilloll.html


・蛇足に攻略本について。
 KOEIですから自社出版の本が2冊でています。

 ジルオール完全攻略マニュアル  ISBN:4877197435
 ジルオール キャラクターズ白書 ISBN:4877197672 

・ソフト自体もそうなのですが、KOEI営業の優秀さゆえか
 「ジルオール」ベスト版、マイナーのわりにお店の片隅PSソフトコーナーに
 SCE、スクウェアエニックスコナミカプコンナムコ辺りと
 堂々ならんで押し込まれていたりします。
 そんなたいしたソフトなのかと思いますが
 「アークザラッド」が入るのを許されるのだから良いのでしょう。

・攻略本も新刊では無理でしょうけれどもブックオフなどで意外に数があります。
 質はKOEIの攻略本ですから期待するだけ無駄。適正価格¥200。
 とはいえやはり攻略本がが必要な内容ですから安いのを狙って買いましょう。
 「インフィニット」ではましなものが出ると良いのですがはかない期待か。

・「キャラクターズ白書」は要は設定資料集ですが、かなりひどい。手抜き過ぎ。
 こちらはあまり出回ってないので入手困難なのですが
 かといってアマゾンで新品を買う価値があるかは疑問です。適正価格¥100。
 「ジルオール」ファンにのみおすすめします。


・剣と魔法のこの手の世界観が好きな方は
 「サガフロンティア2設定資料集」http://www.fukkan.com/vote.php3?no=20399
 をお勧め。これは本当に素晴らしい。絶版ですけど。