『勇者のくせになまいきだ。』

kodamatsukimi2007-12-07


 公式サイト http://www.jp.playstation.com/scej/title/namaikida/ ASIN:B000WQEPYO
 攻略まとめwiki http://maou_moe.wikiwiki.jp/

・製作はアクワイアhttp://www.acquire.co.jp/index_j.html)。
 ゲーマーとしては『『侍』はこうして作られた』(ISBN:4775300431)のあれ。
 『大東京トイボックス』(http://blog.chabudai.com/)とかもございますあれ。
 発売元はSCEですが、そこそこいろいろドラマがあるらしい、ということにしたい。
 そういうのが好きそうなゲームメーカーであります。
 ゲームの中身には関係ないのですが。


・そとみのドット絵に、昔は良かったと歳を経るほど唱えたくなるそれ。
 そしてこのタイトルや、ゲーム内そこかしこにあるおふざけから 
 ゲームとして出来や姿勢はどうなのか、
 ネットの煽りからはファミ通クロスレビューで妙に良い点だったけれどどうなのか、
 とかと構えてしまうところもあります。
 それで実際遊んでみると
 遊ぶモードがすくないとか、難しすぎるとか、説明不足で解法が良くわからん、
 などとの不満がすぐ浮かぶような感触なのですが
 しかしけれど、このゲームは傑作です。



・できることは、ダンジョンを掘ること、魔物を生み出すことだけ。
 勇者様御一行が攻めてくるので、ダンジョンを拡げて資源を増やし魔物を増やし
 強い魔物を作り出して戦力増強、めでたく全勇者倒せばゲームクリア。
 しかして操作可能なのは、つるはしで壁を掘っていくという行動のみ。

・我らが魔物軍団は直接操つることができません。やつら勝手にうろうろ動く。
 けれども壁すりぬけはしないし、その行動には、よくよくすると規則性がある。
 ダンジョン通路を工夫して掘ることで、ある程度それを管理できる。
 魔物どものたまり場ができると、ダンジョン内に散らばる資源がために一箇所へ片寄り
 そうするとそこの壁ブロックを掘ることで、新たに魔物を生み出すことが出来る。


・細かくいうとライフゲームと言うべきですが
 おおまかには、関係しあう条件間に解を求めるパズルゲームである、とも言えます。

・何マス動くとこの魔物はこう行動する、あるいは同じくらいの確率でこうするから
 それを見越してこうしよう。
 勇者どもの能力は固定であるからそれを撃退するに必要な手立てはこの程度。
 この魔物の強さはこうで、数と増やすにはこうで、それを維持するにはこうで、
 しからばこのステージはとりあえずこう、次のステージに備えてこうしてああして。

・けれど、魔物の動きを管理できるには程度があるから
 実は適当に掘ってもそれなりになんとかなるのです。
 逆に完全に管理はできない。決まった正解はそこにない。
 ランダムである、というよりは、適当を許す範囲の程度が絶妙であるパズルゲーム。


・強い魔物を生み出すには、そのエサであるしたっぱ魔物どもが多く必要で
 その魔物を多く揃えるために、さらに多くの資源が必要である。
 それだけだと良くある横文字RTSのようなゲームであるかのようですが
 この魔物軍団は存外割と、自給自足が可能なのです。
 強いのは、生み出しにくく増えにくい代わりに
 弱いしたっぱは、放っておいても増えてくれる。
 ある一定値、上位の魔物どもを養えるくらいまでは増えてくれて
 それでいて、共食いで自滅するほどまでには増えないでいてくれる。

・魔物軍団になすべきことは、上のものを下の連中が支えられる程度の関係を作り
 その集団を複数作って組み合わせ互いに維持し整え、勇者を撃退する質量を持つこと。
 操作できる神の手は、それを導くことしかできないが、導くことだけはできる。
 通路の距離と分かれ道の形状で魔物の巡回路、生態圏範囲を誘導する。
 新しい魔物が生まれれて良い状態が整ったところで実行する。
 そのふたつだけをしっかり機をみて行うこと。
 それだしかできないゆえに明解。
 しかし答えがひとつでないゆえに工夫の余地がある。
 そこで遊ぶことができるのです。


・値段もありますが、単純なゲームです。
 もっとこのアイデアを活かして色々作れるのではなかろうか。
 遊べるモードが少なすぎで、コツがわかってくれば、作業になってしまうのではないか。

・遊んでみると、やはりそのような感じです。
 それでいて即クリアするためむやみやたらに掘っている内、
 自分の方法論という殻を自ら作って自滅します。理不尽に難しく感じる。
 ここで舐めて、そういうゲームだと跳ねられてしまう懸念すら持つ。
 成長とか蓄積とかはない。あるとすれば自身の中にのみ。

・アクションゲームではないのです。
 掘れる回数は限度があるので、勇者が来る前に掘りまくれば良いわけではない。
 答えはないけれど、魔物たちの動きに規則性を持たせて誘導することで
 効率を作りだすことはできるパズルゲームである。
 「不思議のダンジョン」系列を、もっとより簡潔仕上げたものに類似する。

・だから何十時間も遊ぶゲームでもなく
 ちびちび舐めるように、アリの巣を眺めてつついて遊ぶように、
 1日1度遊べば充分なゲームであり、数回遊べばわかったような感想が書けて
 けれどわかった気になったことで遊ぶゲームではなく
 それで暇を潰して遊ぶゲームであるのです。
 奥深いわけではない。出来ることは限られている。
 だから、それで遊ぶのではなく、そこで遊ぶのです。
 良く出来ている。
 傑作です。






・蛇足。
 早速買ってきていただいても良いのですが
 購入意欲をより確実にするため以下の体験版をさくっとひとつ。
 http://www.jp.playstation.com/scej/title/namaikida/trial/index.html
 PSPをネットに接続できないと遊べないのがなんでありますが。
 (追記:PCを介してのダウンロードもできるようになりました)
 初見はアイデア命であり、PCにて簡単に真似ゲームが作れそうだからして仕方がない。


・ざっと遊んだらば、続けて製作者インタビュー。
 http://www.jp.playstation.com/scej/title/namaikida/interview_01.html

 ひとつのシステムで成立するような、ファミコンイズムな思想が根本です。
 宮本茂さんのファミコン初期時代の作品、「クルクルランド」や「デビルワールド」とか、
 ある種インダストリアルデザインとして無駄がないものってカッコいいよなぁと。

 あ、もし次回作やるなら次は逆に「勇者がモンスターを倒すゲーム」ってどうですか?
 そうすると勇者のレベルが上がったり、ストーリーが進行するという新システムを入れて!

・電車忍者。これはある。あと石川五右衛門斬鉄剣版もありだと思いますですよ。