『セブンスドラゴン』

kodamatsukimi2009-03-28


 公式サイト http://dragon.sega.jp/ ASIN:B001U3ZCKE

・発売元はセガですが
 アトラスで『カドゥケウスDS1』や『世界樹の迷宮1』を制作したひとが作ったという
 DSのRPG。箱絵も描いているひとは違うけれど世界樹風。


・ということだけを根拠にして、前情報なしに買って遊んでみたのですが
 中身はなかなか『ドラクエ』ふう。
 『世界樹』の世界は『ウィザードリィ』ふうに終始ひとつの街と迷宮の中でしたが
 今度は街から街へ、世界を歩き回って冒険である。
 中盤、船を手に入れて海上に乗り出し
 終盤、空飛ぶ乗り物を使って北極から南国へと飛びまわるのである。
 メルカトル図法ふう神秘の世界。世界はしかくい。同じだ。そこか。

・『世界樹』なのに街中を歩き回って情報集めて買い物しなければならないのが面倒、
 という最初の戸惑い過ぎると、これはもう『ドラクエ』です。『ドラクエ』だ。
 EXゲージは『8』と違い逃げにも使えて便利ですね危機感知スキルも便利です。
 パッケージを鳥山明風に変えてこれが『ドラクエ9』です、と渡されていたら
 今度もさすが普通に面白いないつもと変わらないけど、とここに書いてしまいそうな
 昔ながらの内容と、一貫して上質だけれど驚くところの少ない出来。


・延期前は本日3月28日発売予定でありました本物の『ドラクエ9』は
 いつもと違ってオンラインゲームになるとかで
 どうなることやら期待と不安が半々ですが
 そもそも『ドラクエ』に何を期待しているのだろうか。
 『ドラクエ』風の『セブンスドラゴン』は何が違うのか。
 「ドラクエのような」とはなんなのだ。
 


・本作の「ドラクエ風」でありながら違うところを挙げると
 それはゆるさ。いろいろ緩い。


・まず、お話の進行がそうである。
 話の入り口、設定開陳序盤こそは
 何をしなければならないのだ、ドラゴンは悪だから倒さなければならないのだ、
 という全体指針の見せ方が明確良くできていて感心、
 なるほどドラゴンクエストですなと思って進めていくと
 すぐにわりと適当になる。ゆるくなる。

・各国各地を回って主人公様ご一行が、国同士の外交問題から迷子の猫を探すことまで
 大小様々な問題を、指示通り行き来するというおつかい行為だけで解決するのが
 主人公が自由に自分の意思を表明しないRPGというもののお話表現技法なのですが、
 表明したらば計算機が困ってRPGを進められなくなるからですが、
 このゲームの場合、
 迷宮の奥にいる悪玉ドラゴンさえ倒せば、余計なことに関わらずいて良いのである。
 国政に関与しなくて良いし、ドラゴンを倒すための知恵と勇気と友情を得るため
 人々を救う必要はないのである。

・世界を救い、存在する事件をあまねく解決するのが主人公の仕事ではないのか。
 それがRPGというものではないか、というのが
 『ウィザードリィ』にも『ウルティマ』にもない『ドラクエ』以降の命題、
 そうでなければならないものなのですが
 そうではないのです。解決に関与しない事件は、エンディングでもしていない。


RPGのふしぎ、なぜ主人公たち以外の強いひとたちが役に立たない活躍しないのか。
 それは、主人公たちが解決できる事件しか関われないからであり
 関われないので解決しないものは、他の人たちが行動しないからできないのではなく
 みなが努力した最善こそ、人事を尽くして主人公様の登場を待つ今なのだ。任天道。
 なるほど。すごく納得だ。

・というのはこじつけですが
 本筋である、しなければならないことがドラゴンを倒すことだけに絞られて
 他の全ては能動的に関わらなければ起動しないイベントとして管理されているのは
 RPGとはおつかいである、戦闘による成長はそれを達成するための手段であり
 目標ではないが目的である、という当たり前を
 上手く転換していて面白い。ゆるくて面白い。



・ゲームとしてもゆるい。
 自分が敵よりあたまがよいから常に勝ち続けられるのが
 RPG、役割を演ずる遊びの楽しさでありますが
 このゲームは『世界樹1』と比べてとても簡単。
 ボタンを押している手が痛くなるほど、敵のあたまがわるい

・単純に、一本道で良い『ウィザードリィ』型の進行であればできた調整が
 それとは違う形にしたから充分ではなかったというのもあると思われますが
 戦闘参加メンバーが5人ではなく4人であるため
 職業やスキルの能力が、『世界樹』と似たような仕組みであるゆえに
 比較して活躍の幅が与えられていないことに不満である。

・テンポの良いゲーム進行、ゲーム起動の早さは良いとして
 ボタン押しっぱなしで済む戦闘、見える強い敵との戦いに緊張感がないのも
 一歩ずつ踏みしめて進み、敵も一歩ずつしか近付かない代わりに強敵であるのとは
 あえて変えたがゆえなのか。
 レベルさえ十分なら必ず勝てるべきなのか。
 こんな簡単ができない世界をなぜ救ってやらねばならんのだ。


・各要素は平凡である『ドラクエ』の良さというのは、バランスが取れているところ。
 最初から最後まで、変わらぬ程よい難しさの程度で進行されるところです。
 バランスとは基準。一見多くの要素を盛り込んでいない単純である仕組みは
 何かを規制するものがないから、基準もそのときごとに変わる。
 変わるたびに前の位置との釣り合いをとって違和感のない変化する基準が
 確固として、変化しながら変わらずそこにある。
 職業や特技や敵の種類という要素が必然増えても、変わらずにありつづける。

・それが魅力なのではなかろうか。『ドラクエ』という印象ではなかろうか。
 ゲームを遊んだ感想というのは、曖昧な思い入れである。
 新作が出た時に前作を遊んでいたとき感じていたことは再生されず
 その後が作り出した噂の伝聞と印象による思い入れでしかなく
 その「伝説」が、いまだ『ウィザードリィ』や『ドラクエ』にはある。
 ゲームの良し悪しとはつまりそういうことなのだ。
 遊んだ大多数へ、遊んでいて楽しかった思いをあとに残すほど持たせたかどうか。


・ゲームにおいて印象の操作とは困難である。
 遊ぶひとの操作次第に任せなければならない部分があるのだから。
 だからゲームは自由であってはならない。
 次に向かう目的地は明確でなければならず
 その次に向かう先で快適に楽しめる条件を満たしているかを
 常に事前確認しなければならない。
 遊び手の操作へ自由に任せておいては、良い印象は自在に得られない。

・そうであり、それを感じさせないものが良いものなのだ。
 そこに注目して、あえて自由な進行をゲーム規則の特徴としたとしても
 ゲームは規則の上で何かと競うことを楽しむという仕組みを踏まえていなければ
 やはり楽しがれない。良くできていない。良いゲームではない。

・『セブンスドラゴン』に感じた『ドラクエ』と異なるゆるさは
 ひとによって遊び方によって印象を変える基準の振れであり
 それは特徴であっても特長ではない。
 ただ、『ウィズ』と『世界樹』のように
 『ドラクエ』と同じである必要もないけれども。



・題名は『セブンスドラゴン』なのですが、なぜ「セブンス」なのか良くわからん。
 数えてみれば7のような気もするし、7に意味もあるけれども
 本当のところ特典リーフレットを見るに
 「ドラゴンクロニクル」にしたかったのではあるまいか。おはなし的にも。
 『ドラゴンクロニクル』公式サイト http://www.dragon-web.com/index.htm
 早い者勝ち仕方がない。

・『カドゥケウス2』も『世界樹2』も作らなかったけれども
 『セブンスドラゴン2』は作るのだろうか。
 常に新しさを求める私の趣味としては
 『ドラクエ9』より『セブンスドラゴン』が早かったように
 さらに次へと進めたものを見てみたいと思います。早い者勝ちです。