『サカつくDS ワールドチャレンジ2010』

kodamatsukimi2010-07-11


 公式サイト http://www.sakatsuku.com/ds2010/index.html ASIN:B0039RHMDY


・「サカつく」は「プロサッカークラブをつくろう」の略。
 「スーパーファミコン」と同じく略称だけれど正式名称。
 プロサッカーチームを運営、選手を集めて練習して試合して、
 どんどんチームを強くしていく、育成SLGと呼ばれるジャンルのゲーム。

・このシリーズを買うのはセガサターン版の『2』以来。10年よりさらにまえ。
 最初は少し勝手が違い、昔を懐かしんだりもしましたが
 遊び始めると止まらない。えんえん続けて止められない。
 いつまでたっても終わらないのでワールドカップに合わせて止めることにした。
 良い出来のゲームです。


・ちなみに、セガによる「つくろう」シリーズには他にも
 野球版「やきゅつく」、競走馬育成の「ダビつく」というのもあり。
 『ダビスタ』は「ダービー」「スタリオン」と言われても何かよく知らないけれど
 略してしまうとなぜかなんとなく競馬ゲームである気もしてくる題名。
 『サカつく』も同じく、なんとなくわかる気がする良い名前だと思います。
 略称というのも面白いものである。 




・ワールドカップに合わせての発売だけあり、日本代表チームを率いて参戦したり
 もちろんWi-Fi全国通信対人対戦モードもあるのですが
 そこに出せる選手は、基本的に自チーム育成モードで育てた選手のみ。

・基本であるこの育成モードですることは、大きく2つ。
 対戦相手などからの選手獲得、そして選手に経験値を積ませてのレベルアップ。
 今作では、この2つ、選手を獲得できる試合と、経験値を獲得できる試合が
 明確に分かれているのが特徴です。この2つを交互に行う日程。


・選手には、試合出場による経験値獲得で上昇、
 シュートやパスなど各種能力値をそのたび上げられる、
 RPGのそれと同じ意味合いの「レベル」の他に
 「コスト」という概念の能力が最初からついています。
 「コスト」は選手ごと決められていて変化不可。

・同じ「レベル」でも、「コスト」が高いほど能力が高い。
 単に「才能上昇限界」でなく、「コスト」が高いほどレベル上昇時の能力上昇が大。
 高コスト1人と低コスト数人は同じ価値。
 初期才能が全ての厳しい世界であります。


・試合は、選手が育つ「リーグ」戦と、選手を獲得できる「カップ」戦の2種類。
 リーグ戦はJリーグとか欧州リーグ、カップ戦はトヨタカップとかそういうの。
 もっとも今はトヨタカップとは言わないらしいですが。

・「カップ」戦では、対戦相手チームやその大会に参加しているチームから
 1試合に1人、選手を獲得できます。
 移籍ではなく獲得。獲得しても相手チームからその選手がいなくなることはない。
 よって、まったく同じ選手を何人も獲得できてしまう場合もあります。
 このあたりの処理は、同じくセガアーケードゲーム
 ゲームセンターに置いてあるサッカーカードゲームである『WCCF』のような処理。
 選手の保有権がカード化されている、とするとわかりやすい。
 自分のチームで、同時に同名選手を出場させることはできない。保持は可。
 そして対戦相手に自チームと同名選手がいても不思議はない。

・「カップ」戦で獲得した選手を「リーグ」戦に出場させ、経験値を積ませて成長。
 当然高コスト選手は「リーグ」の方に出して育てたい。
 連戦すると選手の疲労もたまるので、適宜メンバーの入れ替えも必要。
 「カップ」戦も負けて良いわけでなく、お金の面からも勝つに越したことはない。
 どんどん勝って昇格するほど対戦相手も強くなり
 強い選手、高コストのどこかでみたことある有名選手も獲得できるので
 つまりは、より早く強くなれるわけである。

・勝てばより早く強くなれるのだから勝ちたい。
 けれど強くするためには、今は弱くとも今後強くなる選手を使って育てたい。
 疲労の要素や選手同士の連携なども織り込んで、
 どの選手をどのように起用していくか、でゲームは進みます。


・できることは試合ごとの出場選手、ポジションの決定だけでなく
 試合中おおまかな戦術指示を出すことも可能。
 また各選手のポジションも随時自由に細かくいじれます。
 この、試合で指示できることがらも、かなり『WCCF』と似ています。その簡易版。
 保有選手まわりがカードゲームにあるような処理がされているのも含めて、
 なるほど、『WCCF』の携帯ゲーム機版が出ないわけである。



・もうひとつ目につく、以前と変わったところは
 新しい選手を簡単にどんどん獲得できることに合わせ、
 選手にお給料を支払う、という過程のなくなったところが挙げられます。
 毎年の年棒交渉が面白くも面倒であった昔の『サカつく』とは大きな違い。


・このゲームには、何年以内にJ1に昇格、などの条件がなく
 選手が歳をとらないので、年数制限というものがない。
 ゲームオーバーがないので、何百年でも続ける限り続きます。
 また選手にお給料を払う必要がないので、破産することもない。
 もっともお金がなくなってしまうようでは、強化もできはしませんが。

・サッカーチームを経営するのでなく、チームを強くするのが目的。
 といって、お金をかせぐ必要がなくなったわけではない。
 本拠地競技場の増設、ユースチーム規模の拡大などには
 変わらず大きな額のお金が必要。
 そして選手獲得のためのスカウト、能力向上のコーチなどへ、
 育成効率を追及すると、結局お金がいくらあっても足りなくなる。
 ただ、選手を集めたり引きとめたりすることを
 お金と関連して気をかける必要がない、というところが大きな変化。

・選手の能力上昇も、コスト制の導入もあってとても早い。
 何年にも渡って同じ選手達を育て上げる選手育成SLGではなく
 どんどん有能な選手に入れ替えて、全体の総合力を上げるチーム育成SLG
 以前の自チーム選手を手塩にかけて育てる形式も、
 個々の選手に思いいれ出来るという良さがある。
 けれど、せっかく実名選手が沢山いるのだから
 それらを自チームに招き、使い分けて自らを強くしていく、
 という遊び方に、変えられている。



・以前とはかなりな変化を見せている『サカつく』ですが、その結果、
 じっくり地味に育ち、チームが強くなっていく手ごたえが上手く表現されています。
 最初は負けてばかりだったのが
 いつのまにか点数差が減り、まれに勝てるようになり
 気づけばJ1のトップチームとして優勝を争えるようになり
 海外リーグへも挑戦できるようになる。

・できることは、数値上明確に判る、より優秀な選手に入れ替えていくだけである。
 けれどもちろん、選手間の相性による連携や、
 相手チームに合わせた試合中のポジショニングや戦術指示、
 そういうサッカーにより詳しいほど
 より効率良く働かせられるであろう要素もある。
 サッカーに詳しくなくとも、手間をかけただけ、強くなっていく。
 着実に強くなる、成長していく過程が、心地良く楽しい。


・サッカーというのは『サカつく』の仕組みにとても良く合った仕組みです。
 11人という人数、個々の能力、その組み合わせ、強くなっていく程度の表現。
 『サカつく』はプロサッカーリーグを率いるということを
 うまくシミュレーションゲームにしている。

・相手チームの強さは何年経とうが変わらないのだから
 このゲームはとても一直線、話のすじみちがひとつしかない単調なものです。
 強くなる過程に指示効率による変化はあっても、向かう先はひとつ。
 育成するのはチームの強さ。求められるのはその相手チームに勝てる強さ。
 選手は駒であり部品であり
 戦術的なあれこれは、効率の上で無視できる程度の要素である。

・けれど『サカつく』は、単に数値を適当に組み替える作業ではない。
 現実のサッカーリーグ、選手名、能力値、そして顔グラフィックなどを用いることで
 適した部品を入れ替えていく作業に、色を付け
 現実のサッカーというスポーツを模することで
 適しているということの正解に、理由付けをするSLGである。

・ただ強くなる数値上の最上が唯一正解ではなく
 SLGとして、例えば好きな実在選手に限定して、
 その枠内で出来るだけ強いチームを作る、という遊び方も許容される。
 優れてSLG



・正直言ってこれを書いているひとは、サッカーにそれほど興味がないのです。
 例えば、競走馬育成SLGはものすごい時間遊んだことがあるけれど
 馬券は一度も買ったことがない。
 血統表はゲーム要素としてなら面白いけれど疑似科学
 例えば、『ファミスタ』は子供のころから遊んでいるけれど
 プロ野球の試合を観に行ったことはない。
 市長になったり鉄道会社の社長になって都市開発をしたこともない。
 神になって世界創生、文明勃興を眺めたことも、ゲームの中でしかない。

・けれど、それらからできた育成SLGの面白さは知っている。
 だから、現実のそれを手本、見本、基準として作られたSLGについて
 現実との比較については知っていないけれども
 サッカーチーム育成が面白いかどうかは知らないけれど
 他の育成SLGと比べて、『サカつく』、本作が、良く出来ているのは判る。
 サッカーチーム育成SLGとしてひとつの到達点といえる完成度です。