トロピコ3

Tropico 3( トロピコ 3) Xbox 360 プラチナコレクション
公式サイト http://www.w-russell.jp/tropico3/index.html
いきなり3で1と2の存在を聞いたことがなかったのですが
PC産のゲームらしい。3は360で出たあとPCに移植したらしい。
4はPCでしか出ていないらしい。
遊んだのはそんなシリーズの日本語ろーからいず360版の廉価版。
海の向こうな空気濃密の都市育成SLG
上の日本版パッケージと違って現地版『Tropico 3』はこちら。

Tropico 3 (輸入版)
……。そう、これが海を隔てた文化の違い、
いわゆるひとつのデカルチャーですねわかります。




育てるのはすこし昔の東西冷戦下、カリブ海に浮かぶ国「トロピコ」。
国というか、国のある島は『シムシティ』の市ほども大きくないのですが
政治的にはキューバなみに力があるらしく
アメリカとソ連が援助してくれる。
その島国の独裁者である「プレジデント」となって
産業を育成、住人を増やし国を豊かにして裏金を貯め私腹を肥やすゲーム。
つまりキューバの政治指導者フィデル・カストロ の立場風SLG


さすがに海の向こうは発想が違うとまず感心。
ミクロネシアあたりの島国を舞台に
台湾とか沖縄とかフィリピンのような国や地域みたいなのが
日本や中国やアメリカや東南アジア諸国の顔色伺いながら
都市育成するSLG、というようなものを
日本のゲームメーカーが作れるとはとても思えない。
いや作ろうとするとは思えない。さすがです。すごい。


ゲームとしてすることは
シムシティ』『A列車で行こう』シリーズなどと同じ感じ。
シムピープル』とかのように、
トロピコ国民はひとりひとり名前、年齢、家族、仕事、政治党派などの
単純に能力値という以上にいろいろとその行動を規定する指針があり、
その総和として、ああしたいこうしたいという欲求があるのですが
個人個人の動向を逐次追いかけることは出来ても
プレジデントとしてできることは
トロピコを富ませることで、国民と自身が幸せになることしかない。


トロピコで出来るのは実際のカリプ諸国と同じく
狭い土地でモノカルチャーな農業、
島の大きさから限られた漁業鉱業、
これらの一次産業品を加工して輸出する二次産業、
そして風光明媚な南国自然を活かした観光業。


工場用地を用意すればどこかの資本が流れ込んできてくれるのでなく
まず島民の口を満たす食料を生産して
その余りを売ることで生計を立てるところから始めなければならない。
海に囲まれ独裁者が権力握る政治的に安定しない国へ
積極的に投下される外国資本なんてないのである。
キューバと違ってこの国のプレジデントは
異様に外政力高いのか、相当な地政学上の利を占めているのか、
重大な弱みでも握っているのか、
単に小さい国だからまともに相手にされていないのか、
米ソからかなりの額引っ張っているわりに
資本共産両主義の間でかなり幅ある行動が許されるのですが
それでもトロピコが小さい島であることには変わりない。


国民たちひとりひとりは自身の欲求に従い、
学校があれば学び職場を見つけてお金を稼ぎ、
食べ物を買って時には娯楽を楽しむ。これらを自動で行います。
独裁者としてするのは公共事業。
道路を引き農場を開き警察署や学校や診療所を建て、
生産品加工場に観光客用のホテルも用意、
住むアパートも自動で立つ掘っ立て小屋が美観を損ねるので建ててあげる。
朝から晩まで何から何まで国民の幸せのため奉仕するのがお仕事です。


また、単にこの場所にこの建物を建てよ、と指示を出すだけでなく
建築現場を直接監督し、諸施設を回って督励し能率を向上させ、
時には不心得な反乱者に肉体言語で応対したりと
カストロだけでなくゲバラな働きをすることも可能。
さすがリアル革命指導者を模範とする作品は違います。
国民の要求を確認し産業の成長進捗を計り
反抗する相手には賄賂を贈ったり逮捕監禁してわからせたり
米ソだけでなく国内の様々な政治派閥の顔色伺ったりする。
共和主義国として法が整っているかはっきりしないけれども
成功した独裁者になるのもたいへんなことなのだ。
演説するだけでわりとしたがってくれる一般トロピコ国民のかわいさよ。


細かいところではいろいろ不満もあります。
PC由来のゲームだからか操作周りが快適ではない。
道路敷設立地策定やプレジデント操作は明らかに改善の余地があるし
時事強制イベントの進行ももうすこし円滑な移行をして欲しい。
情報表示も無駄が多い。
目的達成のためすべきこと、その手段としてできることは
それほど多くはないのに
整理が行き届いておらず、できること見られることがばらばら。


情報が豊富に用意されていて、つまり多彩な要素で構成された舞台を
自由に、つまり様々な方法で操り、
その変化を楽しむことが出来る、というのは
SLGとしてとてもよいところなのですが
何でもできる、完全に自由なゲームなんてありえないのである。
またゲームほど明瞭でなくとも一つの行動ごと影響度に順列はある。


階層別種類別に並べる、多層情報を比較して重要度を表示し
可能な選択肢をいくつかにして提示するところまで
「達成目的のあるゲーム」としてはすべき。
現在何をしていて、いつまでに何かをしなければならなくて
ここでは何ができて、次は何が出来なくなるか
調べればわかるのは当然、
知ろうとすれば調べなくとも判るようになっていること。
それがゲームとして良く出来ている、というものでなかろうか。




そういうわけで『トロピコ3』は、さすが海の向こうは違う、
島国日本はガラパゴス自称しているけれどエクアドルに失礼なのでは、
と思わせる日本産にない魅力、SLGとして面白みのある設定のゲーム。
都市育成SLGとしても、やや不満点あるものの
題材の魅力を活かした楽しい作品。
海外産で癖はあるけれど『A列車』や昔の『シムシティ』と同じように、
またPCでなく360で気軽に楽しめるのも良いところ。
資本主義な強権市長や電鉄会社としての開発ではなく
より産業として前段階広範囲の行政運営SLGとしても
RTSともまた違って目新しく面白い。
舞台設定の面白さに負けない都市育成SLGの秀作。
まだまだ面白いゲームはあるものです。