グランナイツヒストリー

グランナイツヒストリー - PSP

英語で書くと『Grand Knights History』。
その昔スーパーファミコンで『グランヒストリア』という
似たような名前のゲームがありましたが
内容をみると本作はそちらと違って
History」すなわち歴史ものではなく
「A War Chronicle」な戦記もののおもむき。
もっとも、ただ字の意味だけみると「戦記」の方が正しい気がしますが、
日本語での「戦記」ものというと『平家物語』とか『太平記』とかだから
まあ『History』でも良いのかもしれない。
源義経織田信長戦艦大和が実はなになにで大活躍、みたいな小説は
架空な「戦記」もの、とするに相応しいですけれども。
はい定義とかわりとどうでもいい。


みためでわかる通り『朧村正』とかのヴァニラウェア製。
PSPなので画面小さいのは難だけれど
この会社製みため、というだけでたいへん結構。
けれどあいかわらずゲームとしてはもうひとつである。
駄目ではなく普通に遊べるけれどやや不足。
前々作『グリムグリモア』や前作『朧村正』は
それでもそこそこなかなか、欠点もあるけれどそれに魅力が勝り、
個人の好みを越えてひとに薦められるくらいに楽しめた作品でした。
残念ながら本作は記憶に残りそうもない。
好みを越えて面白がりがたい。




どういうゲームかといいますと
1人用オフラインRPGで育成したキャラクタを使って
オンライン対人対戦するゲーム。
対戦もRPG形式。育てたキャラクタを同じように使用するので
操作の上手い下手、アクション要素とかはなくキャラ性能と戦術次第。
ざっくりいうと、収集交換要素のない『ポケットモンスター』。


育成RPGモードと対戦モードの2つは、はっきり分かれていて
「育成」から「対戦」にキャラクタデータを一度移すと
「育成」に戻すのは不可。
「対戦」でもレベルは上がるしアイテムも入手でき
「対戦」で入手したアイテムは「育成」の方でも使えますが
キャラクタの移動は一方通行。


育成モードも対戦モードも、同じ一つのそこそこ大きな島が舞台。
現実でないほうのロードス島とか、あるいはヴァレリア島とか、
ドラゴンフォース』とか『ハンドレッドソード』とか
いろいろなゲームでみたことあるみたいな感じの形をしているこの島では
赤青緑の三国が陣どって延々戦争しており
遊ぶほうは、そのいずれかの国に属して
配下騎士団、育てたキャラクタ達による戦力をもって戦争に参加します。


オンライン接続している敵軍勢力にあるひとの騎士団、
オフライン状態ならコンピュータ操つる騎士団と対戦し
その勝敗積み上げが戦況を少しずつ左右。
戦況に貢献するほどえらい。
そしてオンライン対人戦争型対戦するためにあるゲームであるからし
この戦争は当然決着することなく、魔王さまも登場してくれず、
実時間で30時間ごと戦況はリセット。
もとの木阿弥。ゲームだからしかたがない。
戦場で他騎士団に勝つことで活躍することが目標で
そのために部下キャラを育てて最強騎士団を作るのが目的。
逆のようで逆ではない。


戦争形式のオンライン対人対戦で活躍するために自騎士団を育てるのですが
その部分はごく普通に1人用RPGのそれ。
レベルが大きな目安であるけれど最強を目指すのならそこはカンスト当然で
装備アイテムやスキル、回数限定イベントでの成長能力吟味などが係わり
対戦相手との相性対応できるよう
職業や武器種類の組み合わせをいろいろ育てておく、という種類のあれ。
アクション要素なく
カードゲームや大人数ユニット使用仕様のSLG風でもない、
RPG型対人対戦ゲームにおいてよく見られる風な型の仕組み。
つまり『ポケモン』とか『ドラゴンクエストモンスターズ』みたいなそれ。
ただ育てるのはポケモンでもモンスターでもなく
騎士、弓使い、魔法使いの3職種である騎士達であります。




雰囲気は良いのです。私は中世ヨーロッパ風大好きなのです。
表面みためもヴァニラウェア製だから文句はないのですが
ゲームとしては平凡。
1人用オフラインRPG形式の育成パートは、ゲームとして必要なのだろうか。


この育成部分だけを完結したRPGとしてみると、明らかに魅力不足。
「育成モード」であって、また「戦争」が延々続く背景上から
世界を滅ぼす魔王を倒すとかの大きな「物語」を用意しようがなく
お話として達成感が充分得られないから、というのは当然あります。
しかしそれでも「対戦」と分けて置くほどのものでない。
ポケモン』のように、
きたる対人対戦を幅広いひとに楽しんでもらうための導入という意味もなく
多用な種類の仲間を出会う過程でもなく
また舞台背景となる世界に触れる案内としても、残念な出来。


例えば「対戦」モードへ定期的にキャラクタを送り込まなければならない、
というような縛りをつけ、つながりを意識させることで
「現在」は戦時下にある、との背景をより演出しても良かったのでは。
お使いクエストの数や時間経過が存在しないという制約が厳しいとは言え
見た目としてもゲーム進行の緩急からも
もう少し舞台背景に変化や起伏が必要なのでは。


何より、『ポケモン』や『ドラゴンクエストモンスターズ』と比べ
劣っているのは仲間に出来るキャラクタの種類数ではなく
舞台素材となる題材背景のうすさである。
そこへの思い入れが遊ぶほうに前提としてないことである。
その為への色づけが、良くあるふうの中世ヨーロッパふうなゲーム的それと
ヴァニラウェアのみためだけでは物足りない。
人間による騎士団、というのは
実際戦える多彩なモンスターたちを仲間にでき組み合わせられる、というに
決して劣るものではない。
例えば『サカつく』のように、人間だからこその個性付けが
身近に魅力的に演出できる面もあるはず。
現実にある「騎士」だからこその物語を題材とした逸話で
様々に修飾できたはず。




RPG形式で、部下を育てて組み合わせて対人対戦するゲームとして、
他にも似たような先達、大成功している作品が既に沢山あるなかで
それらと比べ、この作品ならではの個性、区別するもの、
何か新しいものがあるかといったら、ゲームの面では何もない。


それでもそれなりそこそこ遊べればそれで良いのかもしれないけれど
私としては、記憶に残るような面白さのない作品。
このキャラにこのスキルを付けこうするとどうだとあれこれ楽しく悩むより
漫然とボタン押している時間が長すぎる。
同じ中世ヨーロッパ騎士ものRPGなら
サガフロンティア2』の設定資料集(ISBN:9784925075541)を読んで
妄想しているほうほうが
同じ時間無駄に使うなら余程楽しい。
そもそも対人対戦が目的のRPG型育成というゲームが
好みでないだけかもしれませんが
好みを踏まえて出来ばえをみると、そういうふうに思うのです。


いっそレベルなし、スキルと装備と職業選択と戦術だけで
勝敗決まるゲームにしたほうが、よりすっきりしたのではないか。
違法改造行為さえ人間がしようとしなければ
そういうゲームもありかと思います。
また育成部分がない、すなわちRPGと名乗りがたいゲームでは
ブラウザゲームとかモバイルゲームのような場でなければ
売れないのでもありましょう。
それも遊ぶ方の需要と作る方の理想希望のずれであり
仕方のないことでもありますが。