艦隊これくしょん


公式サイト http://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html


今年2013年4月から「運営開始」のPC向け「ブラウザゲーム」。
ゲーム中身は1人用の艦隊育成シミュレーション。
公式サイト表記にある通り『艦これ』という略称も正式名称らしい。


基本無料のPC向けブラウザゲーム
あるいはソーシャルゲームとかいわれるたぐいのものについて、
このサイトで感想書くのは始めて。
ううむオンライン時代。
何を今更ではありますが
このサイトを書き始めた10年前にはなかなかなかったこと。
ドリームキャストファンタシースターオンライン』が2000年12月。
PS2版『FF11』が2002年5月。
PS33DSでのオンラインアップデートも
いつのまにやら当たり前にじわじわ浸透、ここ今至る。




まず「ブラウザゲーム」とは何かというと
ウェブブラウザ上で遊べるゲームのこと。
インターネットを見られる環境なら遊ぶことができる。
PS3とか3DSではオンライン対戦やゲームのダウンロードはできるけれど
インターネットにはつなげないので遊べません。


その特徴はお手軽さ。
ゲームソフトを手元ゲーム機とかパソコン、スマートフォン
ダウンロードしてインストールせずに
そのまま遊ぶことができる。
ゲーム買ってきてゲーム機に挿さなくても遊べる。
YAHOOメールのようなフリーメールのように
自分のパソコンでなくとも、ネットにつなげられれば
個人IDとパスワード管理でどこでも遊ぶことができる。
ゲーム本体は手元のゲームを遊ぶための機械の中でなく
ネットの向こう、ゲームを「運営」する会社の手元にある。
いわゆる「昔からあるオンラインゲーム」の簡易版のようなかたち。


お手軽さ、そのゲームを遊ぼうとするに際しての取掛かり低さを
さらに活かすのが、お金のとりかた。
アイテム課金」「基本無料」とかそういうのである。
体験版は無料でダウンロードでき、続き遊ぶならお金を払う、という
家庭用ゲーム機向けでようやく現在一部受け入れられつつある仕組みを
さらに進めて
体験版でなく、無料分で一通りを遊ぶことができるが
対戦で勝とうとしたり、より効率的あるいは快適に遊ぶには
追加でお金を払うことが必要というもの。
この『艦これ』もそういう仕組み。
ゲームソフトをダウンロードする、自分の手元に移す、
何かを「もらう」わけではなく遊べる、
だから無料であることが自然のように感じさせられるとも言える、
よくできた仕組みです。



ネット環境が整備されていなかった昔、
ゲームがお客からお金をとるには
完成品をお店で売るか、
ゲームセンターに置いて、その都度お金を払って頂くかしかなかった。
レンタルはゲーム会社のほうも乗り気でなかったので。
けれど誰もが個人ごとネットにつなげられる現在では
ゲームのお金とりかたも多様であります。


本格的にどっしり腰据えて遊ぶ大型オンラインゲームは
最初にゲームソフトを買ってもらった上、
さらに月にいくらという形でお金をとる。
最近では『ドラクエ10』とか『FF14』はこれ。
ゲームセンターのゲームは、完成品をお店で売るのに比べて
元を取るだけのお金を、その都度の積み重ねからとるために、
新しさという価値の目減りに対抗し得るだけの面白さを
初めから備えていなければ後が続きませんでしたが、
一方上記大型オンラインゲームは、ひと月単位で
お客がお金払うに値するものを提供し続けていかねばならない。
何ヶ月か払い続けてもらって利益でるよう最初からに作っているので
ゲームセンターのゲーム以上に大型規模壮大につくれるかわり
毎月ごとと、総和の要求と、それぞれともに相応しく大きい。
まさに大型ゲームであるわけなのである。


もちろん『FF11』の次に『FF14』が出ているところからし
それでも成り立ちうるもの。
社会人の大多数である私は
これらに適当なだけ遊ぶ時間をとるのが困難ですが
みている分にもまこと面白い。
遊んでみなければ何もわかりはしないとしても。


一方、基本無料で「アイテム課金」とか「条件解除」のような形で
お金をとるゲームも
オンラインゲームだからこその手軽さ。
そのゲームが気に入ったひとには
さらに追加でお金を払ってでも、もっと深く広く長く遊びたい、
という層があることの証明は
ゲームセンターが成り立っている時点で自明だけれど
その需要に対し、新しいゲームソフトを買うという手間より少なく
満たし応える手段が、オフラインでは無かったのである。
オンラインだからこそ在って提供される新しい価値。
追加でなく最初に払った以上の価値があった褒美として
お金を払ったりできることもあるならば、まこと美しい。


ゲームを作るほうにとっても、運営の手間はかかっても
その手間以上に需要をつくれるなら申し分ないし
違法コピーといった遊び手管理の面でも良い面あるけれど
けれど、もちろん良いことばかりではない。
今でもゲームソフトはお店で売っていて
オンラインにつなぐことなく全ての要素が遊べるものも
多く存在している。
中古ゲームは立派に市場を形成し
ダウンロード販路はなかなか拡充しない。


お客に追加でお金を払わせる、というのは
ゲームセンターの形でゲームその最初期からあったとはいえ
簡単なことではない。
問題の多くは、ゲームにおいては
規模が面白さの量と等しいのではないこと、
遊んでみなければ面白さがわからないこと、
遊んでみなければ、どれくらいの楽しさをどれだけの量、
どれだけの期間楽しめるのかが、
遊んでいる方も、作っている方にもわからないからにある。
これは書籍や映像作品では発生しえない、
まことゲームならではの面白いありよう。


オンラインであること、継続してゲームが「運営」されることで
不具合改善されたりすることは
最初の完成度に疑問を抱かせることでもあり
要素の追加は嬉しいことでもあり
さらにかかるお金に見合い続けるか試しあうこと。
ダウンロードコンテンツ」とか「課金アイテム」の存在は
最初に払った分だけ楽しめなければ
文句たらたらの感想をネットに書いて中古に売り飛ばすしかなかった
お客であるこちらに対して
新しい楽しさと面白さと不快や不満を与えてくれるものである。
現金が絡み、その匙加減次第で様相一変する面白さは
子供向けとしてあり続けたゲームにこれまでなかったもので
ますます今後楽しみであるのである。
どのゲーム会社も苦労しております。
そういう意味で個人的に2013年のゲームを象徴するのは
「無料で遊べちまうんだ」の一言で決まりなのだ。そうなのか。




さてようやく本題、『艦これ』というゲームの感想。
1人用艦隊育成シミュレーション。
第二次大戦ごろの軍艦を元にしたキャラクタを自軍に揃え、
戦闘を繰返して経験ためレベル上げ、武器を開発したりして育て、
さらに強い敵を倒していくゲーム。
対人対戦要素は全く無く、交換みたいなこともできない、
オンラインなのにほぼ隅々まで1人専用。


一度に戦場へ出せるのは六隻、というか6人というか、までですが
仲間はいくらでも集めることができ
精鋭一軍でできるだけ先に進み、
後から加わった新参は効率よく大量経験値得られて急成長、という
ファイアーエムブレム』とかの仲間が大勢いるSRPGのようなもの。
仲間は工廠で建造したり、戦闘に勝つと加わったりして続々増えます。
同じキャラクタが複数存在したりするのは
RPGと違い、トレーディングカードゲーム調。
実在軍艦の来歴を、性能特徴だけでなくキャラ立てにも活かしていて、
全体のお話とか設定、なぜどこで誰と戦っているのかとかは曖昧に、
各キャラクタの軍艦という戦う存在だからというところに立脚。
そういうところもトレーディングカードふう。


また海戦シミュレーションゲームでなく
艦隊育成シミュレーションであるというのは
戦闘が自動。出撃させたら見ているだけ、だからであるからして。
陣形の指示だけは出せるのあたりとか、
ダービースタリオン』のような
競走馬育成シミュレーションのレースシーンを思わせるそれ。


戦闘の勝敗、自軍の強さは、出撃した六隻の
職業のようなものでそのキャラクタごと変えられない
「戦艦」「空母」「巡洋艦」「駆逐艦」「潜水艦」のような艦種と、
各個人のレベルとで、ほぼ決まります。
攻撃があたったり外れたりクリティカルヒットしたりと
振れ幅はもちろんあるけれど
速力や攻撃範囲や索敵といった要素はかなり薄め。
戦場がマス目で区切られて移動して撃ったりとか無い。
戦艦も空母も足止め一列最前線で殴り合い。
敵の種類や強さはその戦場ごとほぼ固定。
とにかく時間かけて仲間を敵より強くすれば先に進めるゲーム。


というように書くと
提督の決断』とかの、同じく第二次大戦の海戦を素材とした
戦争シミュレーションゲームに比べて微妙では、という感じですが
題材同じだからみためもつくりも似ているけれど
もちろん相応の個性がある。
手軽さが特長の「ブラウザゲーム」に合わせた
育成部分だけ切り取った割り切り。
それがこの作品の特徴で面白いところです。




戦闘して大ダメージ受けると性能下がるので
修理して直す、というか回復と言うべきか、する必要あるのですが
そのかかる時間が、ゲーム内日数とかターン回数とかでなく実時間。
最初のうちは10分とか30分とかで全快するけれど
レベルが上がるごと時間かかるようになっていき
主力大型艦が大破したりすると2時間3時間あたりまえ。
ただし、ゲームをしていない時間も、この時間は進むのです。
ゲーム止める時に修理や時間遠征に出したり、大型艦建造したりすれば
次の日には立派に成果上がっている。
『小人の靴屋』の妖精さん像はゲームにまこと便利な存在。


他にも実時間が進行に関わる要素に
出撃や建造や修復で消費する資材の時間回復といった要素があります。

この実時間が進行を制限する形で直接関わる、というのは
使い方ひとつ違うと不快でしかない。
『艦これ』でも修理が即座完了するアイテムや、消費資材を
リアルマネー、ゲーム外側こちらがわの現金で購入できる。
ただ資材は建造へ極端に注ぎ込まなければ枯渇はしないし
修復即完了アイテムも普通に遊んでいれば充分入手できる。


実時間がゲームの進行に関わるのは
最初無料のオンラインゲームならではの呼吸。
ゲームに実時間が制限されているとも言えるし
だからこそのゲームから受ける印象もある。
軍艦みなさんや妖精さんたちは、ゲームをしていない間も働いている。
遊んでいない間もゲームは進行している。
同じことの言い換えでも、各艦がキャラクタを持っているからこそでも
それが例えば『提督の決断』にはなかった『艦これ』の特徴ではある。




戦闘では実際のように多様な艦種の様々な特性活かして艦隊組むのを、
例えば総コスト制にしたりすれば良かったのではないかと思うのですが
あえて戦艦も一隻、潜水艦も同じ一隻、と割り切っている。
そのかわり一度の戦闘を短くして
各戦闘ごと、次へ進撃するか母港撤退するかだけ判断するようにし
敵と戦場に合わせてどれ、でなく誰を当てるかの繰り返しの積み上げ、
手元カード切り方の繰り返しひとつにまとめている。
育成も、どう育てるかは重要でなく
いつまでに誰を育てるかだけに、判断するところがあって
手間さえかければ誰をどれだけ育てても良く
一方、効率を求めるなら見渡すこと出来て、工夫する余地が計れる。


戦争を素にしたゲームは、どこをどれだけ単純化して操作させ
対戦なら公平な規則下に競技化して
1人用なら越えるべき障害の高さを明示化が必要。
手間暇手塩にかけた度合いが、勝敗結果につながる殆ど全てという
戦争シミュレーションゲームから育成部分だけを極端に取り出したのが
戦場指示が出来ない、このゲームのまた特徴。


実際の戦場では能力値とかわからないし、レベルとかはないし、
経験値積んで何倍何十倍とか強くなったりしたりしなかったりする。
戦争で育成は、シミュレーションゲーム、それも1人用に限ったもの。
そこだけに焦点当てるものも有りではある。
競走馬育成ゲームでは
騎手になってレース中操作ができなければならないということはない。
サッカーチーム育成ゲームでは
全選手を操作しようと思えばもちろんゲームとしてできるだろうけれど
そうであるからといってゲームとして楽しいか疑問。
むしろ結果が明らかならば、レース場面、競技場面、戦場場面は
結果のみ表示だけだって良いはずなのだ。
結果を決めるのは実力と時の運。
果たしてそれがケームとして面白いか、
どこまで詳細に操作できればより楽しいかとの匙加減。




『艦これ』はブラウザゲーム
長時間ゲーム画面と向き合うのでなく、手軽に空き時間だけ触る、
そういう遊び方に合わせた、
戦争シミュレーションでなく
軍艦素材の育成シミュレーションというつくりが独特。
ブラウザゲームならではの仕組み、制限、規則があり
だからこそある競技性、工夫、すなわち
上手く操作することでより良い結果が得られる「ゲーム性」が
きちんと意識されて有る。
洗練とか完成の度合いは高くなく
育成の手ごたえが曖昧だし
開発や建造の仕組みはこれでよかったのかなかなか疑問であり
細かくこれができれば、こうすればという面は全面様々にあるけれど
方向は一貫整っている。


無料だから、という入り口は変わらなくあって
ではそのゲームが面白かったのか、どれだけ楽しめたか、というときに
それを遊ぶためにかけた時間とかかったお金とが
どれだけ重みを持ってくるか、印象に影響を与えるかは様々。
お金をかけて作って、みためをきれいにして、
戦場を細かく仮想再現して改造開発も分岐を増やし
多様な可能性をつくり出すことができるのが
豪華な戦争シミュレーションゲームではあるかもしれないが
それが楽しいか、面白いかといったらまた別。


ゲームの中にある遊び場は広く、きれいで、多彩多様で、
自由に何でもできる、現実以上に素晴らしいほど素晴らしい、
というのもひとつの方向としてもちろんある。
一方で、その一部分を規模小さくとも
極端に誇張してわかりやすく切り取ることもで
ゲームだからこそできるもの。
ブラウザゲームという場だからの
家庭用ゲーム機に買ってきたゲームを挿して遊ぶのとは
また違う様相のゲームも成り立つことを教えてくれる、
新しい方向の感じられる一作です。