正式名称は「テリーのワンダーランド3D」が後ろに付いて、
14年前の1998年、ゲームボーイがまだ白黒だったころに発売された
シリーズ最初の作品、「テリーのワンダーランド」を
このたび3DS向けに作り直したもの。
なので「テリワン3D」、14年前だしと更に3Dも略して呼ばれているようですが
長い歴史と総計何百万だかの売上げ誇っているらしいながら
わたくしこのシリーズこれまでご縁なく初めて遊ぶので、
私としてはこの作品が、「ドラゴンクエストモンスターズ」なのであります。
3Dの付かないほうが発売された1998年は
ドラクエ歴でいうと、主人公からも推察されるとおり「6」の後。
初代「ポケモン」は1996年。ちなみにプレイステーション1が1994年末。
プレステが出ても4年くらいゲームボーイは白黒だった意外な事実。
15年くらい前とはいえ、わが身の記憶がはかなさよ。
当時のゲームボーイ市場には
「まぜっこモンスター」とか「デビルチルドレン」とか
みるからに小学生くらいを主要顧客と見立てたような、
つまり「ポケモン」に飛びついている周辺にコレジャナイをばらまくような
おとなの思惑がいろいろありました。
「デジタルモンスター」略して「デジモン」という派生なんかは
「いや俺らはたまごっち系で違うからいや遊戯王だからいや違うから」と
いまだ頑張っておりまして、しょうがくせいかわいそう。
もっとも誰もがいつか通った道ではありますけれど。
この「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズも
そういう流れに浮かぶひとつ。
「ポケモン」が出なければゲームボーイは白黒のまま終わって
携帯ゲーム機の歴史、ひいては「テレビゲーム」の歴史、
ガラパゴスな携帯電話の発展も、ずいぶん変わっていたことでしょう。
「ポケモン」は確かに偉大な発明ですが、
「ドラクエ」の力を借りて成り立っている「モンスターズ」に対し
ゲーム単体で成立する商品価値を保てているのも、またすごいことです。
ついでにその「ドラクエ」も明後日が最新作「10」発売のよし。
場は前作「9」のDSからテレビゲームのWiiに移り、
中身はかなりわりと本格的なオンライン専用仕様らしい。
「モンスターハンター」でも「ファンタシースターオンライン」でもなく
「FF11」に近いくらいの大規模さらしい。
ふたを開けてみないとわからないですけれども、
この種類のオンライン専用RPGとして日本国内史上もっとも間口広そうであり
おりしも夏休みとあって、治安のあらくれぶりを怖いものみたくもありますが
勤労者にはこの暑いさなか、じっくりゲームをする体力も時間も気力も
許されていないのである。
コレジャナイとわめいていたころよりお金はあるのですが。
そこにあって今回の「テリワン3D」は
片手間遊ぶにまこと適した逸材であったのでありました。
内容は、ダンジョン潜って、出てくるモンスターに力を見せて仲間にし
仲間にしたモンスターを「配合」して強いモンスターを生み出し
さらに新しく深くダンジョン潜るを繰り返す、というもの。
自軍戦力は部分の総和で決まり、構成する要員は常に更新され続ける、という
サッカーチーム育成SLGのような「強くなり方」のRPG。
「ポケモン」の前、「メガテン」の昔からある、
出てくる敵を部下として使える種類。仲魔でなく仲間。合体でなく配合。
ダンジョンの探索よりも、新しいモンスターを捕まえ収集して
戦闘1回ぐらいごとにどんどんレベルが上がって強くなる部下を育成し
あっという間にたちまち見違えるように強くなる、が主。
お話の進行は、ダンジョンごと最下層にボス敵がいるのと、
育てた部下を格闘場でジムリーダ……でなく
そのあたりにいるひとが率いるモンスターと戦わせて
育成程度を確認する方式。
シンボルエンカウント、敵のいる場所も種類もみえていて
のこり魔法使用回数やアイテム残数などの「リソース管理」とは無縁。
ダンジョンもモンスター集めにできるだけ飽きがこないよう、
入るたびに形状が変わる、けれど落ちている敵種類は同じで安心。
格闘場で戦う相手はもちろん固定。
これらの特徴を象徴するのが、
ダンジョンでうっかり全滅しそうな急場やメタル狩りのような重要時は
部下に個別行動指示を行えるけれど
進行確認の格闘場戦は、行動指示も控えとの入れ替えもできないこと。
すなわちこのゲームで操作するところは、
どの部分をどの部品と交換するかの効率追及に在り
その結果を正しく精度高く確認するに当たっては、
操作の上手さとか、「大魔王からは逃げられない」とかの
あやつるに用いられる技術や知識はもとより
現有戦力の有効活用を臨機応変に図ることも不純なもの。
戦っているのを、指示すらせずみているだけ。
だからこそ、育てることで得られた強さが価値を純粋に持つのである。
そういうところ、カードゲームからの流れを汲んで
互いの相性を許される運値機会幅の中で操作する種の
ゲームらしい対人対戦を最終目的でなく平時目的とするゲームとちがい、
コンピューターゲームのつくる1人用RPGふう、いいかえれば、
相手に勝つためのゲームでなく、自分が強いことを確認するゲームの趣き。
対人対戦でなく1人用で、麻雀でなく「ダビスタ」である。
それが「ポケモン」でなく「ドラゴンクエストモンスターズ」。
ボタンを漫然と押すことで、知っている範囲と量と部分が埋まり、
満たされる種類のロールプレイングゲーム。
しかしもちろん例えば「カルドセプト」と「カルチョビット」の
「ゲーム性」を比べて、前者に「相手との駆け引きがあるから」等々と、
そこに違いはみつけても優劣はないのであり、
どちらが楽しいか、誰かと対戦して勝つのは楽しいが、
1人で計算機相手に工夫する楽しさと比べて上も下もないのである。
暑いのでろくに画面を見ず、戦闘ターン送りのボタンを押して
たまにダンジョンから出てきたら適当に配合をしてまた送り出す、
その繰り返しで無駄に数十時間を潰すのこのゲームと、
一手ごと激しく勝利への手を模索し続ける真剣勝負の数十時間と、
どちらが楽がといえば前者であり、
どちらが楽しいかといえば、どちらも楽しいのである。
時としてどちらかが、つまりはどちらも両方が、
必要在るべき、どちらもゲームなのだ。
宣伝文句によれば色違い含めてとはいえ600種類だかいるらしいモンスターの
それぞれおのおのに個性付けるための特技とか特徴とかが多数あるのですが
それが辞書を別に開いて参照しなければ確認できなかったり
他のRPGと同じくに通過するためだけにあるダンジョンの見せかたが
モンスター集めと狩りで育成のゲーム進行に合っていなかったりと
大きな歴史あるゲームのわりに、あまいところもあるのですが
みためは芸細丁寧に良く出来ているし
ゲームの目的を楽しむには過たず脇逸れることなく十全な揃い。
さすが「ドラクエ」冠すること十有余年許されている仕様の構えである。
すごいぞドラゴンクエスト。
堀井雄二さんとモンスターデザインの鳥山明さん両名の格、
すなわちその仕事に対する信頼が私の中でさらにさらに上に昇ったのでした。
発売のスクウェアエニックスとか製作のトーセとかはどうだか知らないけれど
ドラクエブランド本流近くは今もまだ安定である。
「ドラクエ10」はどうしたものか心揺らぎますが
遊ぶ気はともかく遊ぶ時間がありそうもないのは間違いないところである。