「ゲーム批評 Vol.58」

kodamatsukimi2004-09-19


 マイクロマガジン社 8月3日発売 ¥780
 公式サイト http://www.microgroup.co.jp/game/

・18日発売の「ユーゲー」を読んでいて何か忘れていると思ったら
 8月のユーゲーについて書いていませんでした。

・というわけで1ヶ月2週間前に発売された、
 マニアにはとても評判の悪い雑誌「ゲーム批評」の感想です。


・今回の特集は、
 「任天堂は負けるのか!?〜ゲームボーイ15周年に訪れた最大の危機〜」
 ニンテンドーDSとPSPの比較記事。
 「タダより安いものはない!?〜フリーゲームの今〜」
 無料配布の同人ゲームについて。
 「夏の引きこもりゲームライフ!」の3題。


・まず1特集。編集作業の都合から、5月12日時点の情報をもとに
 ニンテンドーDS、PSPについて分析しています。
 4ヶ月以上も前。
 E3のメディアブリーフィングですね。

 5月12日ゲームウォッチ記事
 ニンテンドーDS http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040512/nds.htm
 PSP      http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040512/psp1.htm

・これをもとに中村彰憲さん(google:中村彰憲)、
 橋本和明さん(google:橋本和明)のお二人がそれぞれについて分析しています。

・中村さんは立命館大学助教授。
 Google検索によると、ゲームについて様々に深く研究されているようです。
 まずニンテンドーDSについて。要約します。
 「任天堂がGBAで打ち出している無線LANでのつながる遊びよりも
  ファミコンミニのシンプルなゲームが求められている。
  シンプルさとは十字キーに象徴されるコントローラーという入力デバイス
  これは本質的には20年間変わらず進歩してこなかった。
  ゲームデザインの枷となっているそれを変える「異質な体験」がタッチパネル。
  これをもちいて開発者がどのような「遊び」を作り出してくれるか期待している。」
 次にPSP。
 「PSPはソニーにとってウォークマンのように機器の代名詞たる地位を目指すもの。
  ソフトラインナップからゲーム、映画、音楽の汎用デバイスとなるのではないか。
  PS2のDVDに習いUMDを売り出していくのは状況も異なり難しいだろう。
  だがUMDソニーの独占メディアであり、成功させるため力をいれると思われる。」

・研究者らしく、社会的、企業戦略的な位置からの見解です。


・次に橋本さん。こちらは開発者であり、ネット事情に通じたライターでもあります。
 「開発者にとり、ハード性能はある方がよい枠である。
  新ハードになればそれなりにアイデアは出てくるもの。
  しかし、インターフェイスが一新するとユーザーに忌避されるのでは。
  だが任天堂は豊富な資金に裏打ちされた高い開発力とソフトを売る力がある。
  成功するかは任天堂がどれだけ力を入れるかに掛かる。」
 「PS2レベルのゲーム機性能は高すぎ開発労力を充分に質に転化できない。
  高機能携帯機も同様である。そもそも携帯に半端な高機能は必要ない。
  SCEの従来の幅広くメーカーを受け入れる開発姿勢が
  PSPが売れなかった際、ついていけないメーカーに重荷になるかもしれない」

・下請け開発会社を経営する立場ならではの意見。

・他に「海外で任天堂ソフトは量、否オンラインの面で受け入られなくなっている。」
 とのレポート。
 それぞれのラインナップについて、PSPは移植もの中心、
 DSはGBAからの移行が中心となると見られる、との一文。

・最期に編集部の総論として、価格、実績から任天堂に分がある、とまとめています。


・さて、どうでしょうか。
 ちなみに私の意見はこちら。
 5月15日「E3に思うこと」http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040515

・現時点ではどちらも具体的なタイトルがさっぱり見えてきません。
 PSPはまだ移植作品でお茶を濁せますが
 タッチパネルを使わないわけにはいかないニンテンドーDS
 その面白さを具体的にどうアピールするのか。
 セガの「きみのためなら死ねる」のようなわかりやすい、
 しかも任天堂らしく完成度の高いソフトを
 年内発売という予定に間に合わせることができるのか。

・PSPはPS2の小型版「PStwo」で逃げそうな感じですし
 東京ゲームショーには出展しない任天堂
 「ニンテンドーワールド Touch!DS」(http://www.nintendo.co.jp/n10/nwt/index.html)  
 というイベントを11月に行う予定。
 本当に年内にでるのでしょうか。


・最終的にどちらが売れるのかはわかりませんが
 ゲーム好きとしては面白いゲームがでれば買うだけです。
 と十年一日ありがちな締め。



・次は「フリーゲーム」。
 ネットで公開されている様々なフリーゲームの紹介、
 同人ゲームの持つ市販ゲームにない可能性、
 まとめとして携帯向けゲームのレベルに達しているフリーゲームに対し
 新しさのない市販ゲームは怠慢である、としています。

・紹介されているサイトですが、当然「ゲーム批評」にはアドレスが書いてあるだけで
 リンクされていません。
 当然ですね。
 しかし。
 しかし、このサイトでアドレスを書くとリンクされてしまうのです。
 「ゲーム批評」を読むより便利。
 これはまずい。


・真面目な話、私は「ゲーム批評」を値段分の価値ある雑誌だと思っています。
 ネットの評判を見るとずいぶん評判がわるいようですが、
 「批評」という名前にとらわれすぎではないでしょうか。
 そういうスタンスの「ただの」ゲーム雑誌のひとつなのです。
 また、「ゲーム批評」に権威はあまりありません。
 具体的には「ゲーム批評」の評価が市場価格というユーザーの評価に及ぼす
 影響は「ファミ通」に比べて微々たるもの。
 そして9月6日にも書いたように、「批評」は優れている必要はありません。
 誰もが、どのような立場の人もが納得する評価などありえません。
 評論に求められるのは、
 深い思考に裏打ちされた独自の斬新な立場からの視点を示唆すること。
 「ゲーム批評」は確かにあまり考えていませんが
 ネットの無記名感想文、このサイトもその中に含まれますが
 それよりは、お金を払うだけの内容ではあるはずです。

・それで何がいいたいのか、というと
 「ゲーム批評」の邪魔、売上妨害はしたくないし
 もちろん内容を書き写すなと怒られたくもないのです。
 そこで、今回のリンク。
 本当は次号の発売を待って書こうかと思いましたが
 この駄文を読んで、この号を買う気になる人が僅かなりともいるかもしれないと思い
 次号発売の2週間前に書いた次第。
 
・つまりリンクさせていただきます。
 問題があるようでしたら直ちに削除します。


・「Mori’s Short Game Gally」 http://www.ymori.com/
 Webゲームクリエイター、森 巧尚さんのサイト。
 Flash、Shockwaveのものが中心。
 お勧めの4つを試してみました。
 いかにもFLASHらしい作品。携帯コンテンツに良いかんじ。
 時間制限がわりと厳しく難しいです。
 なかでは「ニューロニアン」が良かったです。

・「ABA Games」 http://www.asahi-net.or.jp/~cs8k-cyu/
 はてなダイアリーの「ABAの日誌」(http://d.hatena.ne.jp/ABA/9でも知られる
 ABAこと長 健太さんのサイト。
 いまさら紹介するのも何ではありますが、
 どれも面白い。

・「ece4co-shockwave-games」 http://ece4co.vis.ne.jp/
 マウスを使ったゲームをShockwaveで作成。 
 どれも単純明快で良いです。

・「ゲームデザイン」 http://www.gamedesign.jp/
 シェアウェアである「3D麻雀」販促のためのフリーゲーム公開なのに
 アクセスが伸びない上に、売り上げにも結びつかない。
 という思いが赤裸々につづられており泣かせます。
 いまさら麻雀にお金を出す人がいないからでしょうか。
 いや、私は麻雀はわからないので、そうともわかりませんが。


・ゲーマーの主観で言わせていただきますと
 森さんや「ece4co-shockwave-games」のものは
 ベクターhttp://www.vector.co.jp/)や
 ショックウェーブドットコム(http://jp.shockwave.com/home.html
 にあるものと同じ、なのは当然かもしれませんが
 ABAさんのゲームと比べると、プログラム種類がどうこう以上に
 作ろうとしているゲームの方向自体が違うように感じられます。
 いうなれば「ZOOKEEPER」(http://jp.shockwave.com/games/puzzles/zookeeper/zookeeper.html
 と「東方」シリーズの違い。そのまますぎですか。

・どちらも優れていますが、ゲームとして面白さを感じるのは後者です。
 好みの問題、というのは簡単ですが、
 考えるに「新しさがあるか」が違うのでは。
 森さんの作品はどれもが既体験であるゲームの面白いところを取りだして
 コンパクトにまとめたもの。
 ABAさんはSTG、アクションが中心であることもありますが
 新しい操作感、ゲーム攻略感を味わうことができるのです。

・そして「ゲームデザイン」さん。
 サイト名にふさわしく、新しい「ゲームデザイン」を感じます。
 「4字熟語」や「ダイス戦略」。
 確かにミニゲームではありますがアイデアは独自の新しいゲーム。
 「新しいミニゲーム」から「新しいゲーム」への差は
 つまり「ABA Games」との差でもあり、面白いところです。


・「御茶ノ水電子製作所」http://www.ochaden.net/
 AVGを中心に製作するゲームサークル。
 フリーゲームでありながらここまで製作するとは。
 すごい情熱です。

 御茶ノ水電子製作所は、WEBゲームの地位向上をめざし日夜努力している団体です。
 WEBのコンテンツは無償提供が原則であり、
 そこにWEBの真髄があると信じる我々は、
 できうる限り、ユーザーへのフリー公開を目指しています。
    (サイト内 広告スポンサー募集ページより)


・なんとも理解しがたい考え方です。
 何のためにゲームを作っているのか。
 やりたいからやっている、金儲けのためにやっている、どちらもわかります。
 しかし、「WEBゲームの地位向上のため」。
 素晴らしいゲームを作り出して無償で公開する。
 なるほど前々回紹介した「ローグ」のような革新的なゲームならそうでしょう。
 しかし、現状の「感動するAVG」の公開が地位向上につながるのでしょうか。
 
・情報はただであれば価値の定まらないもの、
 有料だからこそ価値を生産するもの。
 やりたいことをやっている。そのためには金がかかる。
 だからこの作品に金を出してくれ。
 まっとうな考えです。
 ユーザーに作品を作り上げる労力の対価を要求するのは当然、
 楽しめたユーザーも、
 製作者の、新しい未知のゲームへ投資するのにお金は惜しみません。
 

・「Reflections」http://laser.narr.as/http://www.input-entertainment.de/ 内)
 英語が読めない。直接リンクして良いのでしょうか。
 「インプット エンターテイメント」というサークルと思われます。
 ゲームは実にシンプルなパズルゲーム。
 アイテムを配置して正しくスタートからゴールへのラインを導く。
 「レミングス」のような、えーと、
 もっとぴったりの歯車をつかうゲームがあったのですが、思い出せません。
 とにかく良くできています。
 しかし、10数年前ならともかく、
 いまや「倉庫番」が市場価値を持たないように、
 「テトリス」に値段がつかないように、
 このゲームも製品にはなりにくいでしょう。

・テレビゲームは芸術でなく子供のおもちゃとして生まれたもの。
 あるいはこれら製品価値を得られなくなった、
 けれども確かにゲームとして面白いゲームが
 市販ゲームとは違う、別のゲームとして残っていくのかもしれません。
 誰が生み出したかはわかっている、古典的パズルとして。


・市販ゲームとネット上のフリーゲーム
 ゲームの面白さは、無料であれば変わってくるのか。
 現実には、ゲームの市場価値は時代とともに減じていくものがほとんど。
 例えば10年前のソフトがそのままでても、かならず値段は下がります。
 でははじめから無料であればどうなのか。
 市場価値は無料同然でも面白いゲームはある。
 無料ゲームが有料になれば評価は変わるのか。
 
・ユーザーがお金を出してでも買いたいゲームと
 ただでも見向きもしないゲーム。
 その差がゲームの面白さの差そのままではないということは
 ゲームの面白さは投資した金額、
 あるいは費やした労力、時間にも関わるのかもしれません。
 面白いです。



・第3特集とソフト批評はスパッと無視させていただいて
 今回は終了。
 今号の「ゲーム批評」、よくできています。
 この調子でがんばっていただきたい。
 といっても次号はとうの昔に出来上がっているでしょうけども。