ノベルゲームの選択肢


・「ひぐらし」の従来のノベルゲームと異なる特徴が、選択肢がないこと。

・けれども「ひぐらし」に選択肢がないのは、
 労力の問題ももちろんあったでしょうけれども、
 選択肢をなくし、全てのプレイヤーが同じだけの情報を得た段階でこそ
 純粋な謎解きゲームができる、という仕組みのため。
 アドベンチャーゲーム、そしてチュンソフトが作ったサウンドノベルにしても
 そのゲームたる所は、プレイヤーが選択肢を選べる、
 という点にあったのですから、実に大きな転換です。


・ノベルゲーム、サウンドノベルとは何か。

 サウンドノベルは、文字送りと演出の合わせ技(スクリプト)で
 読者の想像力を強力にサポートする新時代の小説媒体だ。
 同ジャンルを語る際、これらの効果は「没入感」という言葉で端的に表現される場合が多い。
 「ひぐらし」は、没入感を深めるという従来のサウンドノベルで培われた手法に加え、
 「推理を促す」「錯誤を誘う」といった要素まで強化することに成功した
 次世代のミステリーノベルと呼ぶことが出来るだろう。
             (A.B. 上記リンク記事より引用)

・「弟切草」「かまいたちの夜「街」などのチュンソフトの作り出したサウンドノベル
 アドベンチャーゲームが事件の真相、
 すなわちエンディングにたどり着くのが第一義の目的、
 選択肢が越えるべき障害であったのに対し
 繰り返し遊んで物語を楽しむことが目的で、選択肢はどのような話を選ぶか、
 という語義通り「選択」するためのもの。


・またこの形式はいわゆる「ギャルゲー」に好適なシステムでもありました。
 主人公たるプレイヤーが、事件の終わりを見るためにゲームをするのではなく
 登場人物の女の子と仲良くなり、その過程を楽しむのが目的で
 選択肢はどのキャラクターを選ぶか、のためのもの。
 繰り返し遊ぶこと。そして高い「没入感」を得られること。
 どれもが「恋愛シミュレーション」シミュレーション?ゲームに合っているのです。

・「プリンセスメーカー」「ときめきメモリアル」のような育成要素、ゲームらしい要素は
 シナリオを読み進めるための邪魔であり
 また、アドベンチャーゲームの選択肢によるフラグ立てを恋愛の進行過程に見立てた
 「同級生」のようなゲームも、やはり攻略するのが手間であるからか
 「ギャルゲー」の主流ではないようです。

サウンドノベル、あるいはビジュアルノベル
 「ゲーム」よりも「読み物」としての目的が高いものです。
 また製作者の意図として読み物の特性、あるいはより高い顧客満足度のために
 気に入ったキャラクターの話を選択して読むのではなく
 全ての話を選択して、本当の大団円、「トゥルーエンディング」を見ることが
 目的であるものもあります。
 小説「空の境界」が上下巻あわせて40万部以上売れた作者、奈須きのこさん擁し
 TYPE−MOONの「月姫」「Fate」というこのジャンルを代表する作品も
 同様の構成です。

・この場合、プレイヤーに許された選択肢は
 バットエンド、話の行き止まりの回避や、多少の展開の自由でしかなく
 それは読み進めるための邪魔とならない程度のものであいかありません。
 アドベンチャーゲームの選択肢とは違う意義を持つものです。


・「ひぐらし」はサウンドノベル
 選択肢がないことは、それほど特別なことではありません。
 サウンドノベルは読み物としての完成度を重視するほどに
 選択肢を必要としないからです。