『ルーンファクトリー 新牧場物語』

kodamatsukimi2006-11-10


 公式サイト http://www.bokumono.com/series/runefactory/ ASIN:B000GHMWRG


・もとビクター、今マーベラスインターラクティブの『牧場物語』シリーズ(http://www.bokumono.com/)は
 今年で10年目だそうであるけれども、遊ぶのは初めてであります。
 なぜか。なんとなく。縁。機会。一期一会。


・DSでの今作は、ネバーランドカンパニーhttp://www.n-land.co.jp/)開発。
 さすがな出来であります。
 このブランド作品はどれも、出来合いありきたりな仕組みを
 長く長く持続的に遊ばせて、飽きさせない作りが本当に上手い。
 敵を倒しアイテム集め育成して強化する。その繰返し。ひたすらその繰返し。
 作業、であるのにネバーランドカンパニーが作ると、その繰返し作業が実に楽しい。

・何も特別なことはしていなくて、
 どれだけの手間にどれだけの見返りが必要なのか
 同じ繰返しにもある区切りの時間と広さはどの程度が適切なのか
 その程度調整が上手い、というだけのことなのだ。

・短時間ごとの繰返し作業が、手間をかけただけ確実に成果として帰ってくる。
 その充実した短時間を果てしなくわずかに目新しい要素をまぶして何百回、
 結果何十時間と遊ばせる作り。
 『カオスシード』も『ロードス島戦記 邪神降臨』も『外伝アスカ』も
 『シャイニングフォースネオ』も『煉獄弐』も皆そう。そしてこれもそうだ。


・ただ『フロンティアストーリーズ』は少しばかりしょっぱかったですが。
 マーベラスインターラクティブは信用できない。
 しかしネバーランドカンパニーは信用できるのであります。



・『ルーンファクトリー』は「ファンタジー生活ゲーム」というジャンルらしい。
 他の『牧場物語』は「ほのぼの生活ゲーム」。ほほうほのぼの。ほうほう。
 牧場を耕して、種をまいて水をまき、収穫して売ってお金にしての繰返し。
 牛や鶏を飼ってみたり、家を増築して村娘と結婚してみたり
 ファンタジーになると敵が出てくるので剣を振り、魔法を唱えてみたりする。
 うむ。ほのぼの。である。

・遊び手操る主人公は、何かするたび、
 邪魔な木切ったり石壊したり釣りしたりアイテム合成したりするたびに
 経験が蓄積されて能力が上がり、同じ作業でも必要な体力コストが減少する。
 様々な種の必要な能力を上げることで様々な作業ができるようになって
 作物を育てたり鉱石を掘り出したりしてお金をため、結婚を狙う相手に貢いだりして
 より効率良く生活するのが目標となるゲーム。である。


・このゲームはどこが楽しいのか。
 自分が、少し昔の自分より強く、有能で、お金持ちであることが楽しい。
 作業と引き換えに、ゲーム外の実時間に比較すれば短時間でそう成れることが
 楽しいゲーム。
 RPGでいうレベルは短時間で上げられるし
 それ以外にも何をするにしても、剣を空振りしただけでも能力は、確実に成長する。

・『サカつく』のようなゲーム。
 時間をかけるほど、手塩にかけるほど着実に充実し、かけた時間が無駄にならない。
 育った結果で敵を倒すことももちろん楽しいが、そうでなくとも
 育ちつつある過程を眺めているだけでも楽しい。ただ見ているだけで楽しい。
 なぜなら時間をかけさえすれば、確実に自分の強くある未来があるからだ。


・『サカつく』は育成シミュレーションゲームである。
 サッカーチームを育成する。選手に練習させて試合を繰返し経験と知名度を積み
 お金を集めて、優秀な素質を持つ選手を集めて練習させて試合を繰返し経験と知名度を積み、
 という繰返し。
 チーム全体の能力を強くすること。世界最強のチームを作ること。
 何かに勝つこと、データを持ち寄って比べあうことが目標ではなく
 少し昔の自分より優秀であることが楽しいゲーム。

・育成シミュレーションとはそういうもの。
 娘を育成する。もちろんその結果が自分の嫁か女王になってしまうかは大きな違いだが
 比較するのでなく、そのデータが優れていくことが楽しいのだ。
 前よりより強くすることが可能であることを楽しむゲーム。
 街を育成する。全く自分の自由に設計するシミュレーターではなくゲームとして
 制限の中でより効率良く育てること、黙っていても優秀になるが
 工夫を重ねればより良く強くすることが可能であることが楽しいゲーム。


・シミュレーションとは模擬実験である。
 式に情報を与えることで結果を実際でなく試すこと。
 ただそれだけではゲームではない。
 同じ情報を与えたとき、実際に現実に、出来るだけ忠実な結果を導く式であれば
 ゲームとして優れているとはいえない。楽しくない。
 F1レースを精密再現しても、ほとんどのひとが思い通り操作できず、楽しめない。

シミュレーションゲームである、ということは
 アクションゲームでないということだ。
 必要に際し適宜適当な修正をした結果の未来を見ることができる仕組みであり
 それを楽しめるよう、極めて成功しやすく思い通りになるよう選択肢を用意する。

・それだけで良くて、自由になんでも条件を設定できるシミュレーターであるほど
 ゲームとして一般性がなくなる。つまり多くのひとが楽しみ難くなる。
 Jリーグの試合をテレビで見なくとも『サカつく』は楽しめるが
 選手名と成績が結びつくほど詳しくなければ『ベストプレープロ野球』は楽しくない。
 けれど選手名から何もわからなくとも、『パワプロ』は楽しむこともできる。

・ドライブシミュレーターを、より多くのひとに楽しんでもらうための
 一般化、ゲームにするということ、レースゲームとは何か。
 同じ情報を与えて現実に正確な結果を示すことではなく
 自動車が水上のボートのような角加速度でカーブを抜けていくシミュレート式。
 戦闘機においては敵の弾が見え、見てから避けることができ
 無尽蔵の弾装を持つコスモガンを標準装備しているシミュレートは、
 やはり現実の模擬実験ではある、なぜならそのゲームが成り立つのも現実だから、
 という意味でしかない。一般化などは商売用語であり
 先鋭化することが商業価値を持つなら簡単に意味を違えたりするのである。

シミュレーションゲームとは
 遊びであるゲームとして、何かを正確にシミュレートするのでなく
 何か情報を入力することで結果が出力されるという仕組みを使ったゲームだ。
 あらかじめ用意された式と初期データで活動する数字をながめ
 それに任意の手を加える。思い通りの結果を導くことが出来る。それが楽しい。
 はじめは式構造を把握できなくとも繰り返すことで
 より良く効率的に望む結果を得られるようになる楽しさ。
 そして何かを入力すれば、確実に結果が得られることがわかっている楽しさ。
 それがシミュレーションゲーム



・『ルーンファクトリー』はシミュレーションゲームである。
 ファンタジー生活ゲーム。『ときメモ』が学生生活シミュレーションゲームならば
 牧場生活シミュレーションゲーム
 自分を育成する。自分というキャラクターの能力値を構成する、
 様々な種の技能、戦闘の強さ、資産の所持量、周囲との関係を育成する。

・しかしこれをRPGと言うこともできる。
 牧場主という役割を演じるゲーム。戦ったり作業して能力を上げて強くなり
 用意された舞台と筋書きから自分なりの物語を作りだすロールプレイングゲーム
 目標は昔の自分よりも有能であること。同じ。
 『ときメモ』もRPGとして違和感も問題もない。


・その違いはどこにあるか。このふたつを分けるもの、
 ゲームに置けるジャンル分けのジャンルは何を示しているか。
 それからテレビゲーム、ビデオゲーム、ゲームというものが言える。

・シミュレーションとは、仕組み。
 与えた情報に決まった操作を加えて情報を出力する機構。
 その決められた操作を、ある程度まで自由に操作できる楽しさが
 ゲームにある楽しさ。

・その許される自由の幅は様々であり、
 舞台や筋書きだけでなく正解の限られた選択肢まで用意されるものもあれば
 その舞台において何をするのも自由と、うたうものもある。
 そのどちらが楽しいということは出来ず、楽しさに正しいのは
 遊び手がそこで遊びたくなる場の設定と
 自分の思うとおりに結果を導くことが出来るようになる自由度の狭さである。

・ゲームに与えられる目的は勝利すること。少し前の自分に、競い合う誰かに。
 そうして得られる楽しさが、ゲームをする目的だ。
 ゲームで与えられる目標はそのために強くなることである。
 データを育て、遊び手の技量を育てること。
 その過程で得られる楽しさ、
 ただ見ているだけ、ただ読んでいるだけ、受身であっても楽しめて
 その構造を把握しようとしより良くあろうとする工夫することでも楽しめる過程が
 ゲームという仕組みで得られる楽しさである。


・舞台背景、お話の筋書き、文字や絵で描かれる遊び場の魅力。
 そこに用意された物語を正確に辿るならばアドベンチャーゲームであり
 そこに手を加える過程を繰り返すのならばシミュレーションゲームであり
 そこに物語世界を自らの想像で描くならばロールプレイングゲームである。

・それを正確に操ることを目標とするならばアクションゲームといえる。
 自由に何でも思い通りに操作できることがこの場合価値。楽しさ。

・そして、多くのゲームがどれでもある。


・牧場生活、「ファンタジー生活ゲーム」である『ルーンファクトリー』は
 その舞台で遊ぶことが出来るゲームであって、
 それをどのように遊び、何に楽しさを見出すかの自由度が高く
 何をしても、それぞれに先鋭化したものよりは浅いが、楽しむことが出来る、
 すなわち、個々を単純化され作業化して、かつ、それを楽しめるよう程度調整し
 それを繰り返すことで作り上げていく仕組みのゲーム。
 そういう仕組みとして優れている。



・ゲームは、操作するものだ。何かを操る楽しさだ。
 それだけで、その仕組みというのは一口ではない。
 このゲームが優れているのは、単に程度調整でありその全体構造に新しさはない。
 しかし一方、既に何十年毎日にして新しいゲームの仕組みが生まれ続けていて
 そして終わりはまた見えない。
 にもかかわらずこのゲーム程度に、面白いといえるゲームは決して多くない。

・もったいのないことだ。
 しかしまたけれど、ゲームは目立つものを平均すれば常にその質を上げてきている。
 よってこれからも、ゲームを面白がり続けることが可能であろうと思える。
 優れた良く出来た面白いゲームは遊ぶたびに、それを思い出させてくれるのだ。