『ファイナルファンタジー12インターナショナルゾディアックジョブシステム』

kodamatsukimi2009-09-12


 公式サイト http://www.ff12.com/ ASIN:B002C1AGZE
 アルティマニア ISBN:9784757521001

・『ドラクエ9』に続いて手に取ったのは、またRPGの『FF12』。
 折よくこの7月にインターナショナル版みたいなものの廉価版が出ていたので
 そちらを遊んでいたらたちまちひと月。はやい。

・ときどきアルティマニアを取り出しては眺めていたので
 あまりそういう気はしないのですが、『FF12』遊ぶのは2回目。
 2006年3月発売、3年ぶり。結構それなり忘れていて良い感じ。
 攻略本みながら遊ぶのは初めてなので、参照しながら進めていくと
 初回はあっさり流してしまった所も、いろいろ探りはじめて尽きることなく。
 手間かかった映像みるたびに思いますが、ほとんどのひとは一度見て終わりなのだから
 デジタルデータというのは凄い発明でございます。


・この『インターナショナル ゾディアックジョブシステム』版は
 無印版からいろいろ変更されているのですが
 なかでも「ハイスピードモード」が素敵です。
 移動や戦闘中の処理速度がチョコボダッシュ時がごとく高速になるモードで
 『罪と罰』と違い、サターン版『シルバーガン』のように
 ボタンひとつでいつでも切り替え可なのも良し。
 ボスも瞬殺。リフレク切れたのに気付けず即全滅。
 RPGだけれどアクションゲームがごとく楽しいゲームとなって素敵。二回言いました。

・もちろん『FF12』のRPGとして素の楽しさが大きいのも重要です。
 過去の思い出はあいまい薄れて、現在と正しく比較は難しいですが、
 『FF12』は『ペルソナ3』『ドラクエ9』と並んで3大褒めたい1人用RPGと認定する。
 でも『マザー3』も今思い返すに良いかも。『ゼルダ』はRPGなのか微妙かも。
 『モンスターハンター』は多人数でも遊べる『無双』だけれど
 ではどこからがRPGなのか、とかいうと良く分からなくなりますが
 ともかく『FF12』が、今遊んでも面白いのは確かであります。


 無印『FF12』当時の感想 http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20060404




・この『インターナショナル ゾディアックジョブシステ(略)』版は
 名前の通り、がいこく向けに台詞が英語になっているほか
 ゲーム中身の、敵を倒して得られたポイントでスキルを獲得して戦力増強、という所に
 従来の『FF5』とかにあったジョブ、職業分けを入れて
 成長方向に制限を持たせた仕様が、主な変更箇所となっております。
 つまり「白魔道士」「ナイト」「モンク」「弓使い」とかそういうの。
 それにともないましてアイテムとか敵の強さとか、微妙に変更されているところあり。

・どうでも良い話ですが「モンク」というのは『FF』でしかみない言葉である気がする。
 そもそもどういう意味なのだ。ので調べてみると、
 英語の「モンク(Monk)」とは修道僧のことで
 ギリシャ語の「monakhos( 1人で住む人)」が語源らしい。
 げーむってべんきょうにやくだつなあ。さすが。すごいぞ。


・はなしをもどす。

・『FF12』無印は、成長させていくと最終的に
 仲間だれもが、初期能力やレベルアップ時の成長傾向の違いを越えて
 あらゆる装備と魔法や技を使える万能性能になります。
 とはいえ成長しきるまでの過程は
 入手できる装備武器などに合わせて、仲間をバラバラの傾向に育てて
 チームでバランスをとるという定番の仕様であり、
 初期装備や初期能力や仲間の個性に合わせたり合わせなかったりと
 自由度もありつつ、それが原因で進めづらくなることも少ないという
 なかなか良くできているものでありました。

・ところが今回のジョブシステムは、『ドラクエ9』のように転職ができるわけではなく
 職に就いたら最後までそのまま。
 ルイーダの酒場もありませんので一度職業決めたら取り返し付かない。
 『FF12』だからなのか存じませんが12種類ある職業は
 それぞれ使える武器は大概1職種1系統。
 力や魔力などの能力補正も職業ごとはっきりしており
 使える魔法や技の制限も、きっちり決まっております。
 リフレクとリバース両方を使えるのは1職種のみ。しかしその職はリフレガ使用不可。
 わかりやすくいうと白魔法使いは黒魔法を使えないのです。
 ……。
 字にするとあたりまえな気がしますが、しかしまた思い切った変更だ、なのです。


・その大事な職業選択の説明がまったく充分でないとか、
 普通にクリアする分には必要なさそうな魔法やアイテムは、イベントや店で入手できず
 ダンジョンにさりげなく落ちているとか、
 この『インターナショナル ゾディアッ(略)』版はとても初心者向けでない内容。

・全員が何でもできる万能性能の無印からみると、制限がとても邪魔に映りますが
 バランスが破綻している、というほどではありません。
 無印同様、レベルを上げて店で買える一番高い武器を使って小まめに回復、という
 普通の遊びかたをする分には、
 全員同じ職業を選ぶとかの余程偏ったことをしない限り
 クリアできないということはない。
 クリア後の育て過ぎたのをもてあます要素を遊ぶには
 それなりに仲間の中でできることのバランスを取っておく必要はありますが
 それもまた、許容できる範囲の制限です。
 その中でどうすれば良いかと、新しい戦略を練る楽しみがあります。


・ただ、最初の重要な職業選択の説明がやはり手抜き過ぎる。
 どの職業でどのような能力が付くかは最初にみられるようにはなっていますが
 それにしたって、例えばSRPGで良くあるように
 前衛、後衛系それぞれの下積みジョブから専門職に分岐していく形でも良かった。
 それこそ『ドラクエ9』のように転職可能にしても良かった。

・仲間がどの段階でそろうか知っていて、それぞれの個性も把握していて
 今後の壁となる難関それぞれでどのようなことができると良いのか分かっていないのに
 職業が選べてしまえて、変えられないのは
 やはり2度目以降に遊ぶひと用にできていて、初めて遊ぶひとにはよろしくない所。
 『インターナショ(略)』版が出ても無印は変わらず売っているので
 そもそもそういう位置づけなのかもわかりませんが。



・それで何を一ヶ月も遊んでいたのかといいますと、
 『FF12』自体が2周目で先の内容を知っているからといって
 だから楽しみがそこなわれるような浅い出来ではないというのがまず大きい。

・今更PS2でも、360の「はいでふ」とやらに慣れた目にも、
 『FF12』はうつくしい。
 みかけに奥行きがあります。手間が無駄にものすごくかかっています。
 あちらこちらと見て回るに、一度クリアしたゲームなのに、
 見たことのない景色がたくさんある。
 見たことのある画にも、あらためてその絵面の多面な在り様に感心します。
 裏に回っても表と同じように描かれている。実に無駄だ。
 けれど無駄だから駄目なのではない。
 1周目気付かないところまで凝ることが駄目ではない。
 在って足を引っ張るものではない無駄。贅沢は敵と限らない。

RPGとしても遊んでいて楽しいです。
 お話演出の会話も、時間と手間がかかっていることがうかがえるし
 『FF』が1作ごと積み重ねてきた複雑な様式の上に載っている格好だけでも楽しい。
 銃があり魔法があり飛空挺の船団が空を覆う舞台。
 理由なく主人公ご一行がすごく強く、なぞげな必殺技を唐突に使えるきまり。
 ううむそういうものなのか。なるほどなー。

・大きな仕組みには粗が沢山ありますが、
 ロードの待たせ時間とか、操作するときの気にしなければならない手間といった
 細かいところの仕上げはきちんと成されている。

・『FF12』がたくさんの遊んできたRPGのなかでも褒めたい出来である、というところは
 大勢のひとが遊び、大きな額のお金をかけて作られる大作RPGの、見本となるところ。
 入りやすく、奥深い。
 携帯ゲーム機のように外に持ち出せず、家のテレビに固定された舞台という枠内で
 多くの手間をかけてかけて、多くのひとが遊んで楽しめるように、
 作り得たところが素晴らしい。


・『FF12』を楽しむのにとても重要な補助として
 4冊合わせるとゲーム本体と変わらないお値段の『アルティマニア』も大切です。
 ゲーム画面みているよりアルティマニアをみて
 ああだこおだとあたま悩ませている時間のほうが長い。
 それがまた楽しい。
 本に、ゲーム画面で見られるより、より詳しいデータが並べられていて
 先の展開も知っていてまた本で確認反芻しているけれども、
 しかしそれでも、ゲームを進めて、ゲームの中を眺めて、ゲームを楽しんでいくことが
 まったくなくなることはない。
 そこが『FF12』の奥深さ。良いところです。



・「ハイスピードモード」で駆け続け、1周目60時間かけたものを20時間でみてまわる。
 けれどそれとは別に20時間以上、どうして進めたら効率良いかと本をみていて
 結局あまり効率上がっていなかったりする。
 3周目は、強くてニューゲームでゆっくりみて回る。
 みたと思ったら「ハイスピード」で早送りして、やはり同じ時間本をみて、
 繰り返し確かめる。
 それが今回の『FF12』の楽しみ方でした。面白かった。


・新しいゲームは、それまでに無かった仕組みで出来ていて
 その気付きを知ることを出来ることが、面白いところ。

・では既に知っているゲームを、繰り返しみて確かめるのは、何が面白いのだろうか。
 STGのような、何度も同じことを繰り返すアクションゲームは何が面白いのか。
 それは、出来あがっている仕組みが正確に動き続けることで生み出される秩序を
 ゲームとして操作することでかき乱し
 けれどそれでも変わらぬ秩序が、さらに繰り返し動作し続け、生み出し続けられる、
 構造という仕組みのうつくしさにある。
 規格に沿って切られたネジが、いかなる組み合わせでも回転しつづけ得るように。


・対人の対戦ゲームや、多人数の協力型ゲームでは
 交わす会話や動きのやりとりに、常に定まらぬ新しいものが生み出される。
 対して1人用のゲームでは
 既に作られた仕組みの枠の中で、ゲーム内に許されるデータでしか、
 それを変え乱すことはできない。コントローラーのボタンを押しても、答えはない。

・後からみたり上からみたりする分には、その仕組みは何も生み出せないかのようだが
 ゲームの外に開くことがらを創る楽しさだけが、ゲームではなく
 作られて変わらないものをみてまわるだけの中に、みるものはある。
 好みであり、興味を引かれる様々な要素の連なり。
 好きなもの、楽しいもの。操作していて面白いもの。


・結局面白いゲームとはなんだろうか。
 より面白いゲームを遊ぶために、その基準がしりたいのだ。
 『FF12』は面白い。2回目でもひとつき遊び続けて飽きぬほど面白い。
 そこには、出来の良し悪しとか過去作品への思い入れとか
 これまで遊んだゲームとの比較とか
 遊んだときの周囲の環境のありようなど
 いろいろな、面白いということの条件があって、良くわからない。

・よって結論はひとつ。
 『FF12』は私にとって面白いゲームである。
 このひとときひとつき費やし得たことに感謝できる楽しい作品である。
 それは無意味でもその事実は、私にとって忘れられることではないと。